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ひぢかけまど
如何となれば、
座敷の
肱掛窓や、
欄干から、かゝる
光景の
見られるのは、
年に
唯一兩度ださうである。
些との
風もがなで、
明放した
背後の
肱掛窓を
振向いて、
袖で
其のブーンと
鳴くのを
拂ひながら、
此の
二階住の
主人唯吉が、六
疊やがて
半ばに
蔓る、
自分の
影法師越しに
透かして
視る
庭に向へる
肱懸窓の
明きに
敷紙を
披げて、宮は
膝の上に
紅絹の
引解を載せたれど、針は持たで、
懶げに火燵に
靠れたり。