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ぬりわん
七八ツ
九ツばかり、母が
存生の頃の
雛祭には、
緋の
毛氈を掛けた
桃桜の壇の前に、小さな
蒔絵の膳に並んで、この
猪口ほどな
塗椀で、一緒に
蜆の
汁を替えた時は、この娘が、
練物のような顔のほかは
流し
元の
小桶の
中に
茶碗と
塗椀が
洗はない
儘浸けてあつた。
下女部屋を
覗くと、
清が
自分の
前に
小さな
膳を
控えたなり、
御櫃に
倚りかゝつて
突伏してゐた。
宗助は
又六
疊の
戸を
引いて
首を
差し
込んだ。