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くろはぶたへ
……
下が
黒羽二重の
紋着と
云ふ
勤柄であるから、
余計人目について、
乗合は一
時に
哄と
囃す。
身の
丈六尺余の大男で、
羅紗の黒羽織の下には、
黒羽二重紅裏の
小袖、
八丈の
下着を着て、
裾をからげ、
袴も
股引も着ずに、
素足に
草鞋を
穿いて、立派な
拵の
大小を帯びてゐる。
新任の
奉行の
眼が
光るので、
膝元では
綿服しか
着られない
不平を
紛らしに、こんなところへ、
黒羽二重に
茶宇の
袴といふりゆうとした
姿で
在所のものを
威かしに
來たのだと
思はれたが