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おひきた
掛出さんとする
機番頭太藏は
眼を覺まし大音に
盜人々々と聲を立るゆゑ仁左衞門小猿は
逃出んとする所に大勢
追來りしかば
止を得ず三人程
切拂ひて其場を
立出江戸へ參り候由に付
後追來り
何卒今一
度母や弟に
對面致し
度江戸中を
探し
歩行し
中斯の
仕合故弟が無實の
罪に
陷る事の
悼しく
殊更母は旅籠屋にて病氣の由
承はりしにより
何卒弟を助け母に
孝行を
目掛けて
追來り
後ろより大
袈裟に切り付申候是に
因て嘉川家の者ども
散々に逃退き
漸く喧嘩も鎭り屋敷へ歸りし後此事
内濟にて
相濟たり然れ共私し儀首筋より
脊へ
掛けて
大疵あるに付其時より異名を
も
吐ず逃たりしが惡者共は何所迄もと猶も
間近逐來る故に半四郎は如何にもして逃行んとする
機幸ひ
脇道の有しかば身を
飜へして逃込を