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あまけ
四辺は真暗に暮れてしまって
雨気をふくんだ風が出た。李張は
何時の間にか邸内へ入り、燭の見えている
東房の方へ往って、そこの窓から内を
覗いてみた。
バスケツトを
引揚げて、
底へ
一寸手を
当てゝ
見た。
雨気が
浸通つて、
友染が
濡れもしさうだつたからである。
唯さへ、
思ひ
掛けない
人影であるのに、
又其の
影が、
星のない
外面の、
雨氣を
帶びた、
雲に
染んで、
屋根づたひに
茫と
來て、
此方を
引包むやうに
思はれる。
天井窓からはしめやかに空氣にまじる
雨氣の薄明り