鼻唄はなうた)” の例文
すると、なにか鼻唄はなうたをうたいながら、ちいさなくつの足音あしおとがして、つぎに、ごもんきました。としちゃんが、かえってきたのです。
年ちゃんとハーモニカ (新字新仮名) / 小川未明(著)
機械きかいとどろき勞働者ろうどうしや鼻唄はなうた工場こうばまへ通行つうかうするたびに、何時いつも耳にする響と聲だ。けつしておどろくこともなければ、不思議ふしぎとするにもらぬ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
一ぱいきげんで、鼻唄はなうたまじりに帳簿をめくっていた房次は、まだ三十そこそこの若さで、もう頭のまん中がうすくなりかけていた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
けれども鼻唄はなうたまじりに頂上てうじやう目指めざしてるラランも、ひとりぼつちになると、やつとつかれがてきた。鼻唄はなうたもくしゃみになつてしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
都々逸どどいつの声などがそっちから聞えて、うるさく手が鳴った。誰かが、「ちょッ」と舌うちして、鼻唄はなうたうたいながら起って行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
また、駅馬車の奥に頭を下にして寝そべりながら、鼻唄はなうたのいろんな端くれを不意に歌い出す馬車屋をも、彼はよく呼びかけた。
けてねむ合歡ねむはなの、面影おもかげけば、には石燈籠いしどうろうこけやゝあをうして、野茨のばらしろよひつき、カタ/\と音信おとづるゝ鼻唄はなうたかへるもをかし。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『いつもご精が出ます』くらいのまり文句の挨拶あいさつをかけられ『どういたしまして』と軽く応えてすぐ鼻唄はなうたに移る、昨日きのう今日きょうもかくのごとく
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
傑作は鼻唄はなうたまじりでも喧噪けんそうの巷に於ても書きうるもの、閑静な部屋でジックリ腰でもすえればそれで傑作が書けるというような考えは悲惨な迷信だ。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
赫子は、云うだけは云ったが、折角の計劃が無になったいまいましさを紛らす為めか傍若無人にたてつづけの鼻唄はなうた
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
たまたま、鼻唄はなうたを歌って通るものに会うと、その声からして死んだものらの腐った肉のにおいが聴かれるようだ。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
ですからお経を読むのじゃない。鼻唄はなうたなんかうたうもあればあるいは大いにそのなかでもって腕角力うでずもうなど取って居る奴もある。それはなかなか面白い。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
る年の、四月半ばの或る晴れた日、地主宇沢家の邸裏やしきうらの畑地へ二十人ばかりの人足が入りこんで、お喋舌しやべりをしたり鼻唄はなうたを唄つたりしてにぎやかに立働いてゐた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
今までは折々門外の小路こうじに聞えた夜遊よあそびの人の鼻唄はなうた、遠くの町を流して行く新内しんない連弾つれびき枝豆白玉えだまめしらたまの呼声なぞ
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
どこかで、鼻唄はなうたをうたつてゐるものがあります。そうかとおもふと「だれなの、そこでしくしくいてゐるのは」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
横になると新内しんない明烏あけがらすをところまんだらつまんで鼻唄はなうたにしているうちに、グウグウと寝込んでしまいました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いい機嫌きげんになって鼻唄はなうたか何かで湯へ出かけると、じき湯屋のかみさんが飛んで来て、お前さんとこの阿父おとっさんがこれこれだと言うから、びっくらして行って見ると
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
若いくせに早くから二人も子供をんだ男がいて、よく街の銭湯せんとうで会うと、やっと二つか三つになった赤ん坊を流し場にならべ、楽しそうに鼻唄はなうたをうたいながら
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
大人おとな三人前さんにんまへ一手いつてひきうけて鼻唄はなうたまじつて退けるうでるもの、流石さすが眼鏡めがね老婆ひとをほめける。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヤーシャ おい、だれか来るぜ。(トランクのそばを、さも忙しそうに立ち回り、小声で鼻唄はなうたをうたう)
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「ぢや、麓の村まで、ひとはしり行つて来るでの、あんたは鼻唄はなうたでも、うたつて待つてゐておくれ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
御者ぎよしや鼻唄はなうたばし途断とぎれて、馬のに鳴る革鞭むちの響、身にみぬ、吉田行なるうしろなる車に、先きの程より対座の客のおもて、其の容体ようだいいぶかしげにながめ入りたる白髪の老翁
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
酒がすっかりなくなると、栄子はさばさばしたようすで、鼻唄はなうたをうたいながら帰っていった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たのみ外へ遣置やりおき急立せきたつこゝろしづめて覗見のぞきみるにへい四郎は夜具やぐもたれて鼻唄はなうたうたひ居るにぞよく御出おいでなんしたと屏風びやうぶの中にいりぬしに御聞申事がある布團ふとんの上へあがりけれどもなんの氣もつかところ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるに実際は平坦へいたんな道を、荷物もなく折々休みながら、鼻唄はなうたうたって通ったに過ぎぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
聞えないかの低い声で鼻唄はなうたをうたいながら歩いている源吉爺さんを先達せんだつにして、トヨは毎日の道順にしたがい、のきの傾いた商家がたち並んでいる広い村道から、ほこりっぽい田圃径たんぼみちへと通り抜けてゆく。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
眉山は最早のんきに鼻唄はなうたを歌う春木町時代の眉山ではなかった。
鼻唄はなうたをうたって聞かせた。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
平気へいきで、どんなところでも、鼻唄はなうたをうたってあるけるようにならんければ、一にんまえとはいえない。」と、親方おやかたは、わらいました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんな鼻唄はなうたをうたいながら、お父様はこの頃、何を思ったかおまえの美術学校時代のこわれた絵の具箱を肩にかついでときどき晴れた野原へ写生に出かける。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
牛乳がわきかけた時、女は髪を直した上に襟白粉えりおしろいまでつけ、鼻唄はなうたうたいながら上って来て鏡台の前に坐り
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
くのが、身體からだ縁側えんがははしつて、のまゝ納戸なんど絲車いとぐるまうへへ、眞綿まわたひしやいだやうに捻倒ねぢたふされたのを、松原まつばらから伸上のびあがつて、菜畠越なばたけごしに、とほくでて、したいて、かすみがくれの鼻唄はなうた
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
棄てくさったような鼻唄はなうたや笑い声が聞えて、誰も傍へ寄りつくものがなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お兼はもういちど夜の約束をし、鼻唄はなうたをうたいながら去っていった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
心無くして興に乗る歌だから、鼻唄はなうたといったようなものでしょう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まち問屋とんやや、工場こうじょうや、会社かいしゃなどでは、まぐるしく、ひとたちがはたらいているあいだかれは、鼻唄はなうたをうたいながら、さもたのしそうに、美人びじん姿すがたいていました。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
年頃の若者になつても、鼻唄はなうた一つうたふでもなく、嫌味な教会通ひの若者となりもしない、何処どこから得たか西行さいぎょう山家集さんかしゅうと、三木露風ろふうの詩集を持つて居た。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
盆栽ぼんさいならべた窓のそと往来わうらいには簾越すだれごしに下駄げたの音職人しよくにん鼻唄はなうた人の話声はなしごゑがにぎやかにきこえ出す。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
渠は直ちにきびすめぐらして、鼻唄はなうたまじりに行き過ぎぬ。欣弥は何思いけん
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明日あすもまた天気てんきとみえてゆきうえはもはや幾分いくぶんかたくなってこおっています。そのうえかれは、さくりさくりとあさきたときのみちあるいて、鼻唄はなうたをうたってきました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
盆栽ぼんさいを並べた窓の外の往来には簾越すだれごしに下駄げたの音職人しょくにん鼻唄はなうた人の話声がにぎやかに聞え出す。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
君江はなかばをつぶってサムライ日本何とやらと、鼻唄はなうたをうたうのを、川島はじっと聞き入りながら、突然何か決心したらしく、手酌てじゃくで一杯、ぐっとウイスキーを飲み干した。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
葉桜はざくらの上に輝きそめた夕月ゆふづきの光がいかにもすゞしい。なめらかな満潮の水は「お前どこく」と流行唄はやりうたにもあるやうにいかにも投遣なげやつたふう心持こゝろもちよく流れてゐる。宗匠そうしやうは目をつぶつてひとり鼻唄はなうたをうたつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)