ちょう)” の例文
ちょう役人連名で訴えて出ると、すぐに検視の役人が来た。お寅の傷口は鋭い匕首あいくちのようなもので深くえぐられていることが発見された。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それでもころんだり、きたり、めくらめっぽうにはらの中をして行きますと、ものの五六ちょうも行かないうちに、くらやみの中で
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
鷺娘さぎむすめがむやみに踊ったり、それから吉原なかちょうへ男性、中性、女性の三性が出て来て各々おのおの特色を発揮する運動をやったりするのはいいですね。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愈々いよ/\証文が極って、此の三月の宵節句と節句の二日の内に突出して、五ちょうを廻らなければならんので心配致して居りまする。
その家が何ちょうにあるかをだに知らずにいる。教師に遅れて教場に入る。数学を除く外、一切の科目を温習せずに、ただ英文のみを読んでいる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二三ちょう四方人気のないのを幸いに、杉板の束を運び集めながら、新派旧派の嫌いなく科白せりふの継ぎ剥ぎを復習おさらいし続けて行く。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
博労ばくろうが集まって、博労茶屋や博労宿が無秩序にえだしたので、近頃「ばくろちょう」と呼ばれている辻の辺りから——馬の背が無数に並んでいる。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三四ちょう来てから倉地が今度は後ろを振り返った。もうそこには木部の姿はなかった。葉子はパラソルを畳もうとして思わず涙ぐんでしまっていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
何処どこなにして歩いたものか、それともじっとところ立止たちどまっていたものか、道にしたらわずかに三四ちょうのところだが、そこを徘徊はいかいしていたものらしい。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
このにぎやかな町にはいってから、五、六ちょうあるくうちに清造はどこの店も、自分にはまるでようのないものだということを、小さな頭にさとりました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
と前に立つて追掛おいかけると、ものの一ちょうとはへだたらない、石垣も土塀どべいも、むぐらみち曲角まがりかど突当つきあたりに大きなやしきがあつた。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
水道尻の方から寝静ったくるわへ入ったので、角町へ曲るまでになかちょうを歩みすぎた時、引手茶屋ひきてぢゃやのくぐり戸から出て来た二人の芸者とすれちがいになった。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
時は——大正——年十月十日午前四時、所は——ちょうの町外れ、富田とみた博士邸裏の鉄道線路、これが舞台面だ。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
波紋の石は、まずこの江戸の咽喉首のどくび、品川の夜に投ぜられて、広く大きく、八百八ちょうへひろがっていく。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
サンフランシスコの震火で二十八ちょう四方を焼いたのと、この二つですが、こんどの地震は、ゆれかただけは以上二つの場合にくらべると、ずっとかるかったのですが
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
伊作はせいの高い一番丈夫な男だけに、峠を登る時は、二人から一ちょうほども先きを歩いていました。多助と太郎右衛門は、高い声で話をしながら坂を登って行きました。
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
ちょうの暗がりの間であったが、ここには墓地があったり、掘り返した赤土のなかから昔の人骨が出て来たなどと云う風評があったり、また時々おいはぎが出ると聞くと
落合町山川記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
大阪おおさか俳優中村福円なかむらふくえん以前もと住居すまいは、鰻谷うなぎだにひがしちょうであったが、弟子の琴之助ことのすけが肺病にかかり余程の重態なれど、頼母たのもしい親族も無く難義なんぎすると聞き自宅へ引取ひきとりやりしが
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
やむを得ず七兵衛は、用もありもしないしもちょうへ出て、ぶらりぶらりと軒並のきなみ掛行燈かけあんどんなどを見て行く、一廻りして中堂寺町へ出て、後ろを見ると小間物屋の姿は見えない。
ちょうあまりの道であったが、何処どこをどうして通って来たか、彼は少しも記憶して居なかった。
初往診 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そして、五六ちょう往ってちょっとした横町よこちょうを右へ折れ曲って往くと、家の数で十軒も往った処の右側の門燈もんとうに「喜楽きらく」と書いた、牛肉屋とかしわ屋を兼ねた小料理屋があった。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこで、利助りすけさんと海蔵かいぞうさんは、みずをのみにやまなかにはいってゆきました。みちから一ちょうばかりやまにわけいったところに、きよくてつめたい清水しみずがいつもいていたのであります。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
たしかにお辰と見れば又人もらず、四里あるき、五里六里行き、段々遠くなるに連れて迷う事多く、ついには其顔見たくなりていっそ帰ろうかとト足あとへ、ドッコイと一二ちょう進む内
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
浜町はまちょう細川邸ほそかわてい裏門前うらもんまえを、みぎれて一ちょうあまり、かど紺屋こうやて、伊勢喜いせきいた質屋しちやよこについてまががった三軒目げんめ、おもてに一本柳ぽんやなぎながえだれたのが目印めじるし
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「これからまた、八、九ちょうもあるいてね、森のおくのおくで、大きなかしの木が、三ぼん立っている下のおうちよ。おうちのまわりに、くるみの生垣いけがきがあるから、すぐわかるわ。」
ひやりと頸筋くびすじに触れたものがある、また来たかとゾーッとしながら、夢中に手で払ってみると、はたせるかな、その蝶だ、もう私もねたので、三ちょうばかり、むこずにけ出して
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
ここはいちばん近いポストへちょっとはがきを入れに行くにも二ちょうはある。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そしてもっとくわしく云うと、この両駅の中間に「興安嶺隧道こうあんれいトンネル」と名付けられた長さ三キロメートルつまり三十ちょうちかくもある大トンネルがあって、これが興安嶺をプツリと横断しているのだ。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ああ今の東京とうけい、昔の武蔵野むさしの。今はきりも立てられぬほどのにぎわしさ、昔は関も立てられぬほどの広さ。今なかちょう遊客うかれおにらみつけられるからすも昔は海辺うみばた四五町の漁師町でわずかに活計くらしを立てていた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
まづかぢちょうなる遠銀えんぎん金子きんす五十円の調達を申込む。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かげちょうか。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お国の家は弁天堂の隣りちょうで、これも狭い露路の奥の長屋であった。近所でだんだん聞きあわせると、お国の評判はどうもよくない。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ると石のまわりには、二三ちょうあいだろくろくくさえてはいませんでした。そして小鳥ことりむしなん千となくかさなりってんでいました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
夢にも逢いたい母様おっかさんと、取詰めて手も足も震う身を、その婆さんと別仕立の乗合腕車のりあいぐるま。小石川さしちょうの貧乏長屋へ駈着かけつけて、我にもあらず縋りついた。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若旦那柳絮はいつぞやなかちょうの茶屋に開かれた河東節かとうぶしのおさらいから病付やみつきとなって、三日に上げぬ廓通くるわがよいの末はおきまりの勘当かんどうとなり、女の仕送りを受けて
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まだ一も二里もさきがある勝負なら、なんとかそれだけの距離を取りかえすことができようが、たしかここから十二、三ちょうのぼった中腹ちゅうふくがれいの大鳥居おおとりいだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三人は相当の挨拶あいさつを取りかわして別れた。一ちょうほど来てから急に行く手が明るくなったので、見ると光明寺裏の山のに、夕月が濃い雲の切れ目から姿を見せたのだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
涙ながらに「日本色里の総本家」という昔の誇りをとむろうて、「なかちょう」「中堂寺ちゅうどうじ」「太夫町たゆうまち」「揚屋町あげやまち」「しもちょう」など、一通りその隅々まで見て歩くのはまだ優しい人で
江戸歌舞伎えどかぶき荒事あらごとともに、八百八ちょう老若男女ろうにゃくなんにょが、得意中とくいちゅう得意とくいとするところであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
丁度ちょうどその間四五ちょうばかりというものは、実に、一種何物かに襲われたかのようなかんじがして、身体からだが、こう何処どことなく痳痺まひしたようで、とても言葉に言い現わせない心持こころもちであった、しかし
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
戸外おもてへ出たが、の内の玉を取られたような心持で腕組をながら、気抜の為たように仲のちょうをぶら/\参り、大門を出て土手へ掛り、山の宿しゅくから花川戸はなかわどへ参り、今吾妻橋あづまばしを渡りに掛ると
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すぎ山先生らしい人は、ふたりの手をとって、よこちょうにまがりました。
かいじん二十めんそう (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
門口かどぐちを出て二、三ちょう来た時、私はついに先生に向かって口を切った。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大原は途中で薬局に立寄り、それから私たちは自動車で平河町五丁目まで行き、一ちょうばかり歩きました。洋館の裏からはいりますと、大原は我が子とも知らず浅ましくも種々いろいろの冗談をいいかけました。
謎の咬傷 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
男はあっと驚いたが、もう振り返ってみる余裕もないので、半分は夢中で半ちょうあまりも逃げ延びて、路ばたの小さい屋敷へかけ込んだ。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのうちにひと使つかってつくらせて、三ちょう半分はんぶん自分じぶん食料しょくりょうに、あとの半分はんぶんを人にして、だんだんこの土地とちくようになりました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
お千代は八丁堀はっちょうぼりの妾宅に、重吉はわずか二、三ちょうはなれた新富町しんとみちょうの貸間に新年を迎え、間もなく二月ぢかくになったが、尋ねる人の行衛ゆくえは一向にわからなかった。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
たがいにきつかれつして、八ちょうばかりの坦道たんどうを、見るまに、二町走り三町走り、六町走り、アア、あとわずかと試合場しあいじょう城戸きどまで、たッた二、三十けん——。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかちょう水道尻すいどうじりに近い、蔦屋つたやという引手茶屋で。間も無く大引おおびけの鉄棒かなぼうが廻ろうという時分であった。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
京師けいしの、はなかざしてすご上臈じょうろうたちはいざらず、天下てんか大将軍だいしょうぐん鎮座ちんざする江戸えど八百八ちょうなら、うえ大名だいみょう姫君ひめぎみから、した歌舞うたまい菩薩ぼさつにたとえられる、よろず吉原よしわら千の遊女ゆうじょをすぐっても
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)