是迄これまで)” の例文
是迄これまでだつて、私は貴方のことに就いて、なんにも世間の人に話した覚は無し、是から将来さきだつても矢張やはり其通り、何も話す必要は有ません。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さうして此後このご大凡おほよそこんな状勢じやうせいすゝむからしてしたがつすくなくも是迄これまでいやうへえて國債こくさい總額そうがくふやさずにまし次第しだいである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
ついては是迄これまで勘定かんじょうは、大阪に着たら中津の倉屋敷まで取りに来い、この荷物だけは預けて行くからと云うと、船頭せんどうが中々聞かない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あゝ、海賊船かいぞくせんか、海賊船かいぞくせんか、しもあのふね世界せかい名高なだか印度洋インドやう海賊船かいぞくせんならば、そのふねにらまれたるわが弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはや是迄これまでである。
もっとも此十年ばかりは余程中風めきて危く見え、かつ耳も遠くなり居られ候故、長くは持つまじと思ひ/\是迄これまで無事なりしは不幸中の幸なりき。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かうむり度此上は我々共御家來のすゑに召し出さるれば身命をなげうつて守護仕しゆごつかまつるべし御心安く思し召さるべし然れども我々は是迄これまで惡逆あくぎやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
志「それじゃア僕一人憎まれ者になるのだ、しかし又斯様かような時は憎まれるのがかえって親切になるかも知れない、今日はまず是迄これまでとしておさらば/\」
わたし——さうね、いま——それは今朝けさきたときからわたしだれだかぐらゐつゝてよ、けれども是迄これまで何遍なんぺんかはつてるからね』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
御念ごねんには及びませぬ、閣下、是迄これまでの所、何を申すも我儘育わがまゝそだちの処女きむすめで御座りまする為めに、自然決心もなり兼ねましたる点も御座りましたが、旧冬
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
が、アンドレイ、エヒミチはちゝことばではあるが、自分じぶん是迄これまで醫學いがくたいして、またぱん專門學科せんもんがくゝわたいして、使命しめいかんじたことはかつたと自白じはくしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
懇意こんいわか青年せいねん心易立こゝろやすだてはな遠慮ゑんりよのない題目だいもくは、是迄これまで二人ふたりあひだ何度なんどとなく交換かうくわんされたにもかゝはらず、安井やすゐはこゝへて、息詰いきづまつたごとくにえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼は是迄これまで一冊の詩集と三冊の旅行記とを出版したがその文章と云い、観察と云い、玄人のるいしていたので
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
雖然お房は、周三が是迄これまで使つたモデルのうちですぐれて美しい………全て肉體美のとゝのつてゐる女である。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
是迄これまでの假名は國民の共有物である、此後には少數者の使ふものになつたと云ふことに多くは見られて居ります。併し斯う云ふ古い時代の假名遣が果して國民一般のものでありましたか。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
石橋いしばしひに行つてもはん、わたしから手紙を出しても返事が無い、もう是迄これまでふので、わたしが筆を取つて猛烈まうれつ絶交状ぜつかうじやうを送つて、山田やまだ硯友社けんいうしやとのえんみやこはなの発行とともたゝれてしまつたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
栄華をたれと共に、世も是迄これまでと思い切って後妻のちぞいもらいもせず、さるにても其子何処どこぞと種々さまざま尋ねたれどようやくそなたを里に取りたる事あるばばより、信濃しなのの方へ行かれたといううわさなりしと聞出ききいだしたるばか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ときなるかな松澤まつざははさるとし商法上しやうはふじやう都合つがふ新田につたより一時いちじれし二千許にせんばかりかねことしはすで期限きげんながら一兩年いちりやうねんひきつゞきての不景氣ふけいき流石さすが老舖しにせ手元てもとゆたかならずこと織元おりもとそのほかにも仕拂しはらふべきかねいとおほければ新田につた親族しんぞく間柄あひだがらなりかつ是迄これまでかたよりたてかへしぶんすくなからねばよもや事情じじやううちあけて延期えんき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
申立しかばある時はまづ是迄これまでにて平左衞門が罪の次第落着らくちやくに致すべしとて嘉川一けんの者共口書こうしよ申付られ落着の調しらべを老中方へ差出さしいだされしとなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仮令たとひ先方さきが親らしい行為おこなひをしない迄も、是迄これまで育てゝ貰つた恩義も有る。一旦蓮華寺の娘となつた以上は、奈何な辛いことがあらうと決して家へ帰るな。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あいちやんはうまれてから是迄これまでたつた一しか海岸かいがんつたことがないので、勝手かつて獨斷ひとりぎめをしてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
もとより此度このたび御大喪ごたいさうは、是迄これまでにない事でございますから、うかしてはいしたいとぞんじてりましたところへ、円生ゑんしやう円遊ゑんいうたのまれましたことゆゑはらうちでは其実そのじつ僥倖さいはひ
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「探偵雑誌とはおどしつけるもの」こう思っていた人もあったでしょうが、それを相当ぶちこわしました。可成かな是迄これまでは嚇し付けていたのですから、是からは笑わせた方がいでしょう。
防腐法ばうふはうだとか、コツホだとか、パステルだとかつたつて、實際じつさいおいてはなかすこしも是迄これまでかはらないではいか、病氣びやうきすうも、死亡しばうすうも、瘋癲患者ふうてんくわんじやためだとつて、舞踏會ぶたふくわいやら
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
猛獸まうじう※聲さけびごゑいよ/\すさまじく、吾等われら運命うんめい最早もはや是迄これまで覺悟かくごをしたのである。
何卒なにとぞ余所よそながらもうけたまはりたく存上候ぞんじあげさふらふは、長々御信おんたよりも無く居らせられ候御前様おんまへさま是迄これまで如何いか御過おんすご被遊候あそばされさふらふや、さぞかしあら憂世うきよの波に一方ひとかたならぬ御艱難ごかんなんあそばし候事と、思ふも可恐おそろしきやうに存上候ぞんじあげさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかしながら金解禁きんかいきん出來できると、是迄これまでとはちがつた經濟上けいざいじやう状態じやうたいる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
大丈夫助り候由に受合申候、十八歳に成候男は土藏の戸前をうちしまひ、是迄これまではたらき候へば、私方は多町一丁目にて、此所ここよりは火元へも近く候間、宅へ參り働き度、是より御暇被下おんいとまくだされと申候て
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
すくひしなり或時あるとき彼の四人打寄うちよつ耳語さゝやくやう又七こと是迄これまで種々しゆ/″\非道ひだうになすと雖も此家を出行いでゆく景色なし此上このうへは如何せんと相談さうだんしけるにおつねひざすゝめ是は毒藥どくやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『でも!わたし度々たび/\してないねこてよ』とあいちやんははうとしたものゝ、『露出むきだしてるものはねこほかに!わたし是迄これまでたものゝうちで一ばん奇妙きめうなのは』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その夜から老人は水夫合宿所の上等の室を占領して、是迄これまでの生活に比べては極楽のような生活を其処で送くることが出来るようになった。海に向った大きな窓。白い敷布の涼しそうな寝台ねだい
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
是迄これまで虚心きよしん平氣へいきで、健全けんぜんろんじてゐたが、一てう生活せいくわつ逆流ぎやくりうるゝや、たゞちくじけて落膽らくたんしづんでしまつた……意氣地いくぢい……人間にんげん意氣地いくぢいものです、貴方あなたとても猶且やはりうでせう
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ほゝゝゝゝ——是迄これまでのことを考へて見ましても、其様な日なぞは参りさうも御座ません。まあ、私が貰はれて行きさへしませんければ、蓮華寺の母だつても彼様あんな思は為ずに済みましたのでせう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)