黒装束くろしょうぞく)” の例文
丈余じょうよのさくらの枝から、黒装束くろしょうぞく曲者くせものがひとり、ヒラリととびおりると同時に、いきなり抜きうちに左近将監に切ってかかりました。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ハッと気がつくと、そのうす白いもやの中に、目ばかり光らした黒装束くろしょうぞくの男が、もうろうと立ちはだかっているではありませんか。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
将軍家そぞろ歩きの折の休み茶屋である錦霜軒から、夜になると黒装束くろしょうぞくの影が二つ、船見山の蔭から吹上ふきあげの方へ出かけてゆく。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たけの高い黒装束くろしょうぞくの影が一つ中庭の隅にあらわれる。こけ寒き石壁のうちからスーと抜け出たように思われた。夜と霧との境に立って朦朧もうろうとあたりを見廻す。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
芹沢らがいよいよ寝込んでしまったと見定めた時に、近藤勇だけは平服、土方と沖田と藤堂の三人は用意の黒装束くろしょうぞく
黒頭巾くろずきん黒装束くろしょうぞくに隠れて人形を使っているのが傀儡子、使われているのが傀儡だとのみ思っているのです。しかし昔の傀儡子は、そんな狭いものではありません。
振り仰いた万太郎は、梨地なしじの星をさえぎって屋根の峰に立った黒い男の影を、一目で日本左衛門の黒装束くろしょうぞくと見てとりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何等の障害物がなくてさえ落ちんとは保証が出来んのに、こんな黒装束くろしょうぞくが、三個も前途をさえぎっては容易ならざる不都合だ。いよいよとなればみずから運動を中止して垣根を下りるより仕方がない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十余人がおどり立って用意の黒装束くろしょうぞく
黒装束くろしょうぞくは、手まねきするやいなや、岩つばめのようなはやさで、たちまち、そこからかけおりていってしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒装束くろしょうぞくに全身をつつんでおりましたが、背丈や肩幅のまるで違っているばかりでなく、腰に横たえた大刀も身なりにふさわしく頑丈で、足どりも大股に来る様子。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忍剣はこおどりして見まわすと、そこに、思いがけない美少女がみをふくんで立っている。少女の足もとには、なぞのような黒装束くろしょうぞく上下うえしたがぬぎ捨てられてあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さて、この夜中に、黒装束くろしょうぞく横行おうこうするやからは、いずれ、盗賊とうぞくのたぐいであったかもしれませぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、また一方の黒装束くろしょうぞく
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)