黒影こくえい)” の例文
中隊長は、近づき来る約一個中隊ばかりの黒影こくえい見遣みやりながら、決心したらしく、「伏射ふせうちの構え」を命じて、自分も指揮刀を握りなおして伏した。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
と、飛鳥ひちょうの様に飛びかかる黒影こくえい、あなやと身構える明智の耳に、意外、味方の文代のいそがしい囁声ささやきごえ
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、怪青年の黒影こくえいが、ぱッと目に入るだけだった。私達と弥次馬とは、ずっと間隔かんかくができてしまった。そして、いつの間にか、まるうちりの、ほりちかくまで来ているのに気がついた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わしの一もうにもたらず、かれの姿は、つばさのかげにありとも見え、なしとも思われつつ、鷲そのものも、たちまちはとのごとく小さくなり、すずめほどにうすらぎ、やがて、一点の黒影こくえいとなって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
森厳藍碧しんげんらんぺきなる琅玕殿裡ろうかんでんり黒影こくえいあり。——沖の僧都そうず
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見ると、庭の向うの隅の所に湖水の薄明りを背景にして、一つの黒影こくえいうずくまっていました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
黒影こくえいが一つ、また一つ、氷上ひょうじょうにとびだしてゆく。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ギョッとして一同が立ちすくんでいると、黒影こくえいが息をはずませて報告した。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
黒影こくえいが治良右衛門の声で答えた。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)