麻痺しび)” の例文
まして飛騨山中の冬の夜は、凍えるばかりに寒かった。霧に似たる細雨こさめは隙間もなく瀟々しとしと降頻ふりしきって、濡れたる手足は麻痺しびれるように感じた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「その悪漢めが俺にポイズンを飲ませたのだ! 人がいやだと言うのに、無理に毒を飲ませてしまったのだ! あ、手が麻痺しびれる」
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)
しばらくすると、頭が麻痺しびれ始めた。腰の骨が骨だけになって板の上にせられているような気がした。足が重くなった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信徒は恐怖に麻痺しびれながら、尚遁がれようともがいたものの、それほんの一瞬で、見る見るうちにグッタリとなった。完全に捕虜とりことされたのである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
麻痺しびれるようになった頭が、今にも恐ろしい断念をもって垂れそうになって来ることもある。
地は饒なり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
なんだかそこいらが湿っぽくれている。からだのどこかが麻痺しびれて知覚がない。白い、濃淡のない、おっぴろがった電燈の光が、眼の玉を内部へ押し込めるように強く目に映じた。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
彼女は、麻痺しびれたふたつの腕を空へ伸ばした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足が耐へられぬ程麻痺しびれて来た。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
オンコッコは力をこめてジョン少年の胸の辺を偃月刀えんげつとうで突き刺そうとした。とにわかに手が麻痺しびれた。
大勢の婦人たちが麻痺しびれたような結果に陥っているのでして、むしろ憎むべきものはベナビデスその者であろうと私は考えております、過日も申し上げましたとおり
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
手を毛布けっとのうちで、もじつかせても、心持肩を右から左へゆすっても、頭を——頭は眼がめるたびに必ず麻痺しびれていた。あるいは麻痺れるので眼が覚めるのかも知れなかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし我々の麻痺しびれきった頭で、そこまで納得がゆくのには、大分の間があった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
五分とたないうちに、貧血の結果手が麻痺しびれるので、持ち直して見たり、甲をでて見たりした。けれども頭は比較的疲れていなかったと見えて、書いてある事はもなく会得えとくができた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
麻痺しびれるわい、身も心も!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「駄目だ! 手が麻痺しびれてきた。早く医者ドクターを呼んでくれ、医者を!」
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)
手足が漸次だんだん麻痺しびれて来る。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「手が麻痺しびれると言ってるんです」
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)