鯱鉾しゃちほこ)” の例文
その楠の板は木目が雲のようになっておりまして、その上に芳流閣の金の鯱鉾しゃちほこと青い瓦とが本物のように切りつけられておりました。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それはかのかき木金助ききんすけ紙鳶たこに乗って、名古屋の城の金の鯱鉾しゃちほこを盗むという事実を仕組んだもので、鬼太郎君は序幕と三幕目を書いた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ご自慢の金の鯱鉾しゃちほこも、骨灰微塵こっぱみじんになりましょう! 人家へ打ち込めば火事となる! 焼き立てましょうかな、六十二万石!
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
サラサラした水は快く彼等の軟い胸毛を濡して、鯱鉾しゃちほこ立ちをする様にして、川床の塵の間を漁る背中にたまった水玉が、キラキラと月の光りを照り返した。
一条の縄 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ただ光子さんの白い足袋たびの向うに、大仏殿の金の鯱鉾しゃちほこが空のうすあかりに底光りしてました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
熊「フヽム左様そうよ、彼女やつ来てくれとかしアがッてよ、おいらが面を見せなけりゃア店も引くてえんだ、本ものだぜ、鯱鉾しゃちほこだちしたって手前達てめえたちに真似は出来ねえや、ヘンんなもんだい」
独楽こまを押しいただいた蛾次郎は、そのままうしろへ引っくりかえって、鯱鉾しゃちほこだちでもやりたかったが、またしかられて取りあげられては大へんと、かたくにぎっておどりだしたいのをこらえていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
獅子ししや虎のようなもの、鰐魚わに鯱鉾しゃちほこのようなものもあり、人間にも凡物で無い非凡な者、悪く云えばひどい奴、褒めて云えば偉い者もあり、矮人わいじんや普通人で無い巨人も有り、善なら善、悪なら悪
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鯱鉾しゃちほこだちをしたってわかるこッちゃァあるめえて。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)