かぐわ)” の例文
川音がタタと鼓草たんぽぽを打って花に日の光が動いたのである。濃くかぐわしい、その幾重いくえ花葩はなびらうちに、幼児おさなごの姿は、二つながら吸われて消えた。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またトリックにしても、あまりに凝りすぎて尋常な読者にはとうてい端倪たんげいすべからざるようなのもかぐわしくない。
現下文壇と探偵小説 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
しかし島君はこう訊かれても早速にいらえをしようともしない。ふと彼女は立ち上がった。フラフラと縁先へ歩いて行き、かぐわしい初夏の前栽せんざいへつとその眼を走らせたが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして奇麗きれいに傷口を洗ってやって、その上、傷口へ二三度かぐわしい息を吹きかけてやって云いました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これらの蘭を御覧に入れるという、我国民の真情は、誠に蘭花のようにかぐわしい極みである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
紅蓮こうれん白蓮はくれんかぐわしきにかず
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)