いん)” の例文
... 俳劇なんぞ百作ったって二百作ったって、亡国のいんじゃ駄目だ」寒月君は少々むっとして、「そんなに消極的でしょうか。私はなかなか積極的なつもりなんですが」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そらあげてホツといきをつくさま、こらへかねたる樣子やうすは五いん調子てうしにあらはれぬ。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかして、その声はあたかも人の口笛のごとき響きにて、よく五いんをいい分け、人と問答会話するをもって、なんぴとにてもこの怪声に対し問いを発せば、いちいちその答えを得という。
「啓之助、お前は兵学に通じておらぬから、話せない。人が殺される間際まぎわの五いんほど明らかなものはないのじゃ。たしかに誰か殺されている。イヤ、誰かではない。今叫んだ声のぬしが斬られた……」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いんの外れた聲、あまりの事に二人は顏を見合せるばかりです。
されど、なお熟練の足らざる故にや、いまだ明らかに五いんをいい分かつことあたわず、ただ、問いを発する人があらかじめ方法を定めおける応答の方法に従いて、これに応ずるに過ぎざりき。
上田敏うえだびん君の説によると俳味とか滑稽とか云うものは消極的で亡国のいんだそうだが、敏君だけあってうまい事を云ったよ。そんなつまらない物をやって見給え。それこそ上田君から笑われるばかりだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あの初めに——笛は五声八いんうつわ、四徳二調の和なりとある」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こらへかねたる様子は五いんの調子にあらはれぬ。
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いんの調子にも明かです。