露骨あらわ)” の例文
怪しき臭気においならぬものをおおうた、わらむしろも、早や路傍みちばた露骨あらわながら、そこにはすみれの濃いのが咲いて、うすいのが草まじりに、はらはらと数に乱れる。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肘まで露骨あらわに出た、象牙細工のような両手を前にさし出して、足をつま立てて、おるのでござります。もすそは道の露にぬれて、袖ばりが夜風に払われて、ハタハタと翻ります。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし私はそんな露骨あらわな問題を先生の前に持ち出すのをぶしつけとばかり思っていつでも控えていた。若葉の色で疲れた眼を休ませていた私の心は、偶然またその疑いに触れた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは又、上野介が小細工という説も有るが、勿論地図も出たろうなれど、それには露骨あらわに黄金埋蔵とは書いてなかったので、単に金山脈の書入れとでも見たものか、何の沙汰にも及ばなんだ。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
と、忘れたようにつかを離すと、刀は落ちて、赤熊は真仰向けに、腹を露骨あらわに、のっとかえる。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肌は咲き初めた紫陽花あじさいのように、濃い紺青や赤紫やまたは瑠璃るり色やまたはかばや、地味地層のちがうに連れて所まだらに色も変わり諸所に峨々ががたる巌も聳え曲がりくねった山骨さえ露骨あらわ
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たった今向こうの森の中で捕虜いけどりにされたものと見えて、頬の辺に生々しい切り傷の跡がついていてそこから生血が流れている。純白の服はズタズタに千れ肌さえ露骨あらわに現われている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)