さまた)” の例文
蓮如『は、は、は、は、まあ、そう恥しがらんでもよい。恋も因縁ずく。勧めもせられん代りにさまたげもせられん。ただ忘れてならぬのは六字の名号みょうごうじゃぞよ』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
母たるの愛と喜びが職業に全力を捧ぐることをさまたげんとの杞憂——全てこれ等の意識の集合は近代の解放せられたる婦人を強迫的に尼僧たらしめんとするのである。
婦人解放の悲劇 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
そこで不老上人に乞うて妃を元の姿に行ないかえしてもらうということが、話の本筋にはいってくる。妃の蘇りにとってさまたげとなったのは、妃の首の骨がないことであった。
それにしても、太夫、物事は、ケチがつきはじめると、あとからあとからヘマが出るものだ——大望といって、あんまり大事を取っていると、どんなさまたげがはいるかわからぬ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
妥協と云ふ意味でなく自分さへ確かならそして母親の職業や境遇に同情と理解があるならばまた何も母が彼女の生活に積極的にさまたげをしやうとするのでないならばあゝまできつぱりと結果を
ウォーレン夫人とその娘 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
それまでは、男女席を同うせずといったような堅苦しい旧道徳の束縛が、互に物を言ったり、交際するのをすらさまたげていた。これに対する反動は、たゞちに、恋愛至上主義にまで行ったのである。
婦人の過去と将来の予期 (新字新仮名) / 小川未明(著)
切支丹がどんなものか知らないが、何のさまたげにもならないものを、無理に詮索して、むごたらしく殺させるまでもあるまい。七十八人の磔刑はりつけを鈴ヶ森に立てたところで、御政道の自慢にはなるまいよ。
往生は人間の如何にもさまたげを受けない。人間の生れるに先だち、はや往生が決定されているのである。もはや美と醜とに煩わされない王土が厳然と在るのである。これをこそ美の浄土と呼んでよい。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その声は、寸時、風の神にさまたげられて杜切れたが……
が次なる行為への転調のさまたげとなるなれば。
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
切支丹がどんなものか知らないが、何んのさまたげにもならないものを、無理に詮索して、むごたらしく殺させるまでもあるまい。七十八人の磔刑はりつけを鈴ヶ森に立てたところで、御政道の自慢にはなるまいよ。