開襟かいきん)” の例文
何時いつの間に登って来たのか、白ズボンをよれよれにし、紺の開襟かいきんシャツの胸をはだけた勇が三尺の登口のぼりぐちに不機嫌に突立つったって居た。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
T君の山男のような蓬髪ほうはつとしわくちゃによごれやつれた開襟かいきんシャツの勇ましいいで立ちを、スマートな近代的ハイカーの颯爽さっそうたる風姿と思い比べているうちに
小浅間 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私は今では、完全に民衆の中の一人である。カアキ色のズボンをはいて、開襟かいきんシャツ、三鷹の町を産業戦士のむれにまじって、少しも目立つ事もなく歩いている。
作家の手帖 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼は分け目もわからぬ蓬々ぼうぼうした髪をかぶり、顔も手も赤銅色しゃくどういろに南洋の日にけ、開襟かいきんシャツにざぐりとした麻織の上衣うわぎをつけ、海の労働者にふさわしいたくましい大きな体格の持主だが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鼠地ねずみじに白い立縞たてじまのある背広に開襟かいきんシャツを着た、色の黒い、頭髪を綺麗きれいに分けてで着けた、何となく田舎紳士と云う感じのする、せた小柄な人物で、膝の間に洋傘ようがさを挟んでその上に両手を重ね
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こんどのシャツには蝶々のはねのような大きいえりがついていて、その襟を、夏の開襟かいきんシャツの襟を背広の上衣の襟の外側に出してかぶせているのと、そっくり同じ様式で
おしゃれ童子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
開襟かいきんシャツ一枚でいいよ。」
おさん (新字新仮名) / 太宰治(著)