鎧直垂よろいひたたれ)” の例文
風折烏帽子かざおりえぼしむらさき懸緒かけおを着けたに負けない気で、この大島守は、紺染こんぞめ鎧直垂よろいひたたれの下に、白き菊綴きくとじなして、上には紫の陣羽織。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ねりの二ツ小袖の上に、白絹に墨絵で蝶をかいた鎧直垂よろいひたたれは着ているけれども、甲冑かっちゅうはつけていない、薄青い絹で例の法体の頭から面をつつんでいる。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それはうるう二月の一日であったが、この日宮家には蔵王堂の御座ぎょざに、赤地の錦の鎧直垂よろいひたたれに、こくばかりの緋縅ひおどしの鎧——あさひの御鎧おんよろいをお召しになり、竜頭たつがしら御兜おんかぶとをいただかれ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
行ってみると、義辰は派手な鎧直垂よろいひたたれに巨躯を飾って、陣門の前で待っていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
シャれ声をしぼって駈けまわっていたが、そのうちに、一ヵ所の陣幕のすそが、烈風にふきあおられてぱッとくられた刹那、チラと、その中にいた赤地錦の鎧直垂よろいひたたれと八龍の兜との人影を
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
纐纈布で作られた鎧直垂よろいひたたれは着ているが、鎧は着けてはいなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)