銃先つつさき)” の例文
稀には何処から迷い込んだか洋服ゲートルの猟者が銃先つつさきしぎひよのけたゝましく鳴いて飛び立つこともあるが、また直ぐともとの寂しさに返える。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
撃ち倒したというわけなんだ。おれがこうして押さえているから、紀久ちゃんは蔦の傷口に銃先つつさきをつけて撃ってくれ
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
再び、将校の銃先つつさきから、煙が出た。今度は弱々しそうな頬骨のとがっている、血痰を咯いている男が倒れた。
(新字新仮名) / 黒島伝治(著)
……あのゴンクールの銃先つつさき真向まともに見ながら、あれだけの芝居を打つなんか、とても吾々には出来ません。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
下では、船頭が、火縄を鼻の先にいぶして種子島の銃先つつさきを空へ向け、じっと、小猿を狙いすましていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやしくも錦旗きんきにたいして銃先つつさきを向けたものである、すでに大義に反す、なんぞ英雄といいえよう
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そこへ笠を深くかぶった、草鞋穿わらじばきの、猟人体かりゅうどてい大漢おおおとこが、鉄砲てっぽう銃先つつさき浅葱あさぎの小旗を結えつけたのを肩にして、鉄の鎖をずらりといたのに、大熊を一頭、のさのさと曳いて出ました。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そしてかれは、博士の抱えていた破壊銃の銃先つつさきを、力いっぱい横にはらった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雨が降り過ぎたり、旱天ひでりが続き過ぎたりして、犬の鼻がかなくなり、私の銃先つつさきが狂うようになり、鷓鴣のそばへも寄りつけなくなると、私はもう正当防衛の権利でも与えられたような気になる。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
そしてシャツを押し開き、心臓を探りあて、そこにピストルの銃先つつさきをあてた。クリストフはひざまずいて、夜具の中に顔を隠していた。引き金を引くときに、彼女は左手をクリストフの手にのせた。
銃先つつさきを揃えて、打ったというわけなんだ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
銃先つつさきを見せすぐる
丘陵風景 (新字新仮名) / 今野大力(著)
むしろ、七名の小人数ではあったが、この途端に、山上から数百歩駈け下りて来て、明智兵の影を認めるや否、銃先つつさき下がりに撃って来たわずかな弾丸のほうが、はるかに奇効きこうを奏した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「つまりさ、銃先つつさきはどっちに向いてたの?」
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
常三は馬上の正勝に銃先つつさきを向けた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
周馬はといえば、今や、構えを取った銃先つつさきの焦点へ全念をこらしかけていたので、それとは気づかずに指へ力をこめかけると、いきなり、伸びて廻った万吉の足が、ウム! とその片肘かたひじを蹴払った。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)