鉢合はちあわ)” の例文
木庵もくあんの「花開万国春はなひらくばんこくのはる」が呉昌蹟ごしやうせき木蓮もくれん鉢合はちあわせをしてゐる事もある。が、客間を飾つてゐる書画は独りこれらの軸ばかりではない。
漱石山房の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は看護婦の口から夫人の名前をいた時、この異人種いじんしゅに近い二人が、狭いへや鉢合はちあわせをしずにすんだ好都合こうつごうを、何より先にまず祝福した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして女湯の扉口ドアぐちへ行こうとした、ちょうどその時彼は其処で湯屋の女房とばったり鉢合はちあわせをしたのみか、ちょっと見咎みとがめられたのであった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
以前に捩上げたる下役の腕をかえして前へ突放したからたまりませぬ、同役同志鉢合はちあわせをして二人ににんともに打倒れました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
或いはすぐ近くに聞え、或いは急に遠くなり、けれども絶えずその唱歌の練習は続いて、ふいに、私は鉢合はちあわせするほど近く、その歌の主の面前に出てしまった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それを、この闇の中、慌てる程方角を失って、捕えて見れば味方同志の鉢合はちあわせであったりして、どこへもぐり込んでしまったのか、賊は容易に逮捕出来なかった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし、彼の家族のものと鉢合はちあわせをさせてしまったのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「学校は河原の鉢合はちあわせです」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
反対と反対が鉢合はちあわせをして、おいしまったと心づいて、また出直すと、同時同刻に向うでも同様に出直してくる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のけぞりかえるように、逃げ腰に振り返った途端とたん発止はっし鉢合はちあわせたのは束髪そくはつった裸体の女客であった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
吾輩がこの際武右衛門君と、主人と、細君及雪江嬢を面白がるのは、単に外部の事件が鉢合はちあわせをして、その鉢合せが波動をおつなところに伝えるからではない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのニーナ嬢が、階段のところで、曾呂利本馬と、鉢合はちあわせをした。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)