金釵きんさ)” の例文
父の夢は子の胸に復活いきかえった。「金釵きんさ」とか、「香影こうえい」とか、そういう漢詩に残った趣のある言葉が正太の胸を往来した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、楊雄は、彼女の珠櫛たまぐし金釵きんさかんざしなどことごとくムシりって地へ投げ、その手で腰の剣を抜き払った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其方そなたながめて佇立たゝずめば、かぜたはる朗詠らうえいこゑいとゞゆかしさのかずへぬ糸子いとこ果敢はかなきものとおもてゝ、さかりのべに白粉おしろいよそほはず、金釵きんさ綾羅りようらなんのためかざり、らぬことぞとかへりみもせず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分を楽しませた後に、むろの港へもってゆけば、大金おおがねになる女だ、しかも今夜のは、やんごとなき上﨟じょうろうの君で、年ばえも瑞々みずみずしく、金釵きんさ紅顔というからの詩にある美人そのままの上玉だ、ぬかるなよ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)