金瓶梅きんぺいばい)” の例文
みん代もげんの後をけて、小説戯曲類は盛んに出て居ります。小説では西遊記さいゆうき金瓶梅きんぺいばいのたぐいは、どなたもよく御承知でございます。
が、「水滸伝すゐこでん」「西遊記さいいうき」「金瓶梅きんぺいばい」「紅楼夢こうろうむ」「品花宝鑑ひんくわはうかん」等の長篇を絮々綿々じよじよめんめんと書き上げる肉体的力量には劣つてゐると思つてゐる。
僕は空が曇ったり晴れたりしているもんだから、出ようかどうしようかと思って、とうとう午前の間中寝転んで、君に借りた金瓶梅きんぺいばいを読んでいたのだ。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
私はそれでも黙って、桂子に次の日の朝、「金瓶梅きんぺいばい」を書き引替えで稿料を持ってきてくれた雑誌社の金を全部渡す。私にも数々の桂子のデタラメがはっきり分る。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「まさか、金瓶梅きんぺいばい……」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金瓶梅きんぺいばい古今ここん無双の痴情小説たる所以ゆゑんは、一つにはこの点でも無遠慮に筆をふるつた結果なるべし。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その頃神田明神前の坂を降りた曲角に、かぎなりに縁台を出して、古本をさらしている店があった。そこで或る時僕が唐本の金瓶梅きんぺいばいを見附けて亭主に値を問うと、七円だと云った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
或日先生の机の下から唐本が覗いているのを見ると、金瓶梅きんぺいばいであった。僕は馬琴の金瓶梅しか読んだことはないが、唐本の金瓶梅が大いに違っているということを知っていた。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
客は、襖があくと共に、なめらかな調子でかう云ひながら、うやうやしく頭を下げた。これが、当時八犬伝に次いで世評の高い金瓶梅きんぺいばいの版元を引受けてゐた、和泉屋市兵衛いちべゑと云ふ本屋である。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こころみに思へ、品蕭ひんせうの如き、後庭花こうていくわの如き、倒澆燭たうげうしよくの如き、金瓶梅きんぺいばい肉蒲団にくぶとん中の語彙ごゐを借りて一篇の小説を作らん時、善くその淫褻いんせつ俗をやぶるを看破すべき検閲官のすう何人なるかを。(一月三十一日)
金瓶梅きんぺいばい肉蒲団にくぶとんは問はず、予が知れる支那小説中、誨淫のそしりあるものを列挙すれば、杏花天きやうくわてん燈芯奇僧伝たうしんきそうでん痴婆子伝ちばしでん、牡丹奇縁、如意君伝によいくんでん、桃花庵、品花宝鑑ひんくわはうかん、意外縁、殺子報、花影奇情伝
客は、襖があくとともに、なめらかな調子でこう言いながら、うやうやしく頭を下げた。これが、当時八犬伝に次いで世評の高い金瓶梅きんぺいばい版元はんもとを引き受けていた、和泉屋市兵衛いずみやいちべえという本屋である。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いかがでございましょう。そこで金瓶梅きんぺいばいの方へ、この次郎太夫を持ちこんで、御執筆を願うようなわけには参りますまいか。それはもう手前も、お忙しいのは重々承知いたしております。が、そこを
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
金瓶梅きんぺいばい程の小説、西洋に果してありや否や。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)