せん)” の例文
頼子善、名はせん竹里ちくりと号した。蘭軒を板橋迄見送つた。富士川さんは「子善は蘭軒の家に寓してゐたのではなからうか」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
向こう見ずなその男——太史令たいしれい司馬遷しばせんが君前を退くと、すぐに、「全躯保妻子くをまっとうしさいしをたもつの臣」の一人が、せん李陵りりょうとの親しい関係について武帝の耳に入れた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
たれでも、國史こくしひもとひとは、かなら歴代れきだい天皇てんのうがそのみやこせんしたまへることをるであらう。それは神武天皇即位じんむてんのうそくゐから、持統天皇ぢとうてんのうねんまで四十二だい、千三百五十三年間ねんかん繼續けいぞくした。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
印南いんなん杏坪きやうへい文河ぶんか竹里ちくりは既にかみに見えてゐる。文河は定良さだよし、竹里はせんである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
古今を一貫せる通史つうしの編述こそは彼の一生の念願だったのだが、単に材料の蒐集しゅうしゅうのみで終わってしまったのである。その臨終りんじゅうの光景は息子・せんの筆によって詳しく史記しきの最後の章に描かれている。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)