運上うんじょう)” の例文
例えば江戸市中の何処どこの所に掘割ほりわりをして通船かよいせん運上うんじょうを取るがよろしいと云う者もあり、又あるい新川しんかわ這入はいる酒に税を課したらかろうとか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一、送り荷の運賃、運上うんじょうは一駄一分割いちぶわりと御定めもあることなれば、その余を駄賃として残らず牛方どもへ下さるよう、今後御取りめありたきこと。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それに要する周防材すおうざいや備後材などの国々からの運上うんじょうにせよ、土地ところの武家と中央の令との折合いがさっぱりつかず、いたずらに国費を食っているだけだった。
理由は、松倉屋が二代にわたって運上うんじょう(税)をごまかしていたというので、総額二万八百両という、けた外れにばかげた数字をあげた。もちろん払えるわけがない。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
入漁料といわず、「運上うんじょう」という。運上とは、昔の言葉で税金という意味になるそうだ。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
『百姓はちょうど油かすのようなものじゃ、絞れば絞るほど汁が出る』と、こういったような考えのもとに、我々百姓を絞り取り、また町人に対しては、やれ運上うんじょう冥加金みょうがきんのと
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あるいは、そのために運上うんじょうを増して煙管の入目いりめつぐなうような事が、起らないとも限らない。そうなっては、大変である——三人の忠義の侍は、皆云い合せたように、それを未然におそれた。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただおかみ運上うんじょうを収める道具になるだけのことであるという観念を与えた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
回収しきれなかった加印なしの銀札をそのままにして、新たに銀札を発行し、また運上うんじょうの範囲を間口二けん以上の家屋、土蔵、物品や売買、庭樹、井戸などにまでひろげた。
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この商売をなすには莫大の費えなれども、政府には米もなく金もなきゆえ、百姓・町人より年貢ねんぐ運上うんじょうだして政府の勝手方をまかなわんと、双方一致のうえ相談を取り極めたり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「おれにはわからねえ、町役にでも話せばなんとかしてくれるだろう」と茂次はむっとした口ぶりで云った、「こういうことはお上の仕事だ、そのためにこっちは高い運上うんじょうを払ってるんだから」
ちいさこべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)