這廻はいまわ)” の例文
よく見れば細かく肩をふるわせて泣き入っていた。えりが乱れて乳色の首筋が背中の方までむき出しになり、その上をおびただしいおくれ毛が這廻はいまわっている。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
蚊帳を釣っても寝床の上をうようよと這廻はいまわる——さ、その夜あけ方に、あれあれ峠を見され、羽蟻が黒雲のように真直まっすぐに、と押魂消おったまげる内、焼けました。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
は何時の間にか太くたくましく成ッて、「何したのじゃアないか」ト疑ッた頃には、既に「そいたいのじゃ」というへびに成ッて這廻はいまわッていた……むし難面つれなくされたならば
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
が、吉野紙を蔽えるごとき、薄曇りの月の影を、くまある暗きむぐらの中、底を分け出でて、打傾いて、その光を宿している、目の前の飛石の上を、つに這廻はいまわるは、そもいかなるものぞ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殿たちの空を飛ぶ鳥は、私等わしらが足の下を這廻はいまわる、水底みなそこうお天翔あまかける。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おのれ、としんをまず丹田たんでんおちつけたのが、気ばかりで、炎天の草いきれ、今鎮まろうとして、這廻はいまわるのが、むらむらと鼠色にうねって染めるので、変に幻の山を踏む——下駄の歯がふわふわと浮上る。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)