車夫わかいしゅ)” の例文
小家こいえがちょっと両側に続いて、うんどん、お煮染にしめ御酒おんさけなどの店もあった。が、何処どこへも休まないで、車夫わかいしゅは坂の下でくるまをおろした。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玄関に居た頃から馴染の車屋で、見ると障子を横にしてまばゆい日当りを遮った帳場から、ぬい、と顔を出したのは、酒井へお出入りのその車夫わかいしゅ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
車夫わかいしゅが、笠を脱いで手にげながら、裏道を崖下がけさがりに駈出かけだして行った。が、待つと、間もなく肩に置手拭おきてぬぐいをした円髷まるまげの女が、堂の中から、扉を開いた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでも、板屋漏るともしびのように、細くともして、薄く白い煙をなびかした、おでんの屋台に、車夫わかいしゅが二人、丸太を突込つッこんだように、真黒まっくろに入っていたので。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
裏門の方へ出ようとするかたわらに、寺のくりやがあって、其処そこで巡覧券を出すのを、車夫わかいしゅが取次いでくれる。巡覧すべきは、はじめ薬師堂やくしどう、次の宝物庫ほうもつこ、さて金色堂こんじきどう、いわゆる光堂ひかりどう
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
事実、空間に大きく燃えたが、雨落に近づいたのは、巻莨まきたばこで、半被股引はっぴももひき真黒まっくろ車夫わかいしゅが、鼻息を荒く、おでんの盛込もりこみを一皿、銚子ちょうしを二本に硝子盃コップを添えた、赤塗の兀盆はげぼんを突上げ加減に欄干ごし
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その近処の病家へきました時に、其家そこの作男が、沼を通りがかりに見て来たって、話したもんですから、やど貴下あなた好事ものずきにその男を連れて帰りがけに、廻道まわりみちをして、内の車夫わかいしゅに手伝わして
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
車夫わかいしゅ、ここだ、ここでおろして。……待っててもらおう。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
車夫わかいしゅさん、はい——……あの車賃は払いましたよ。」
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょいと車夫わかいしゅに声を懸けたが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)