身中みうち)” の例文
又親里の事を誇りて讃め語る可らずとは念入りたる注意なり。いたずらに我身中みうちの美を吹聴ふいちょうするは、婦人に限らず誰れも慎しむ可きことなり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
本妻の悋気りんき饂飩うどん胡椒こしょうはおさだまり、なんとも存ぜぬ。紫色はおろか、身中みうちが、かば茶色になるとても、君ゆえならば厭わぬ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
路傍みちばたに寝ている犬をおどろかして勢よくけ去った車のあとに、えもいわれず立迷った化粧のにおいが、いかに苦しく、いかにせつなく身中みうちにしみ渡ったであろう……。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誘惑! 誘惑が、私の身中みうちを虫が這うように、這い𢌞っている。それはむずむず這って進んでゆく。からだ中を這い𢌞って精神の中まで這入り込む。精神はもう、殺すということしか考えない。
狂人日記 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
身中みうちにかなりの痛みを覚えて幾つも拳骨をい、幾つも蹶飛けとばされたようであった。彼はぼんやりしながら歩き出して土穀祠おいなりさまに入った。気がついてみると、あれほどあった彼のお金は一枚も無かった。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
このわが身中みうちに、このわが血液によみがへるべし。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
路傍みちばたに寝てる犬をおどろかしていきほひよくけ去つた車のあとに、えもはれず立迷たちまよつた化粧けしやうにほひが、いかに苦しく、いかにせつなく身中みうちにしみ渡つたであらう………。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
われ夏の恵み受けじといどみしが、今宵こよいついに打ち負けて、身中みうちつかるゝまでのこころよさ。