贅沢品ぜいたくひん)” の例文
旧字:贅澤品
しかるに経済社会の進捗しんちょく富財ふざい饒多じょうたとなるに従って、昨日の贅沢品ぜいたくひん今日こんにちは実用品と化し去り、贅沢品として愛翫せらるるものは
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
百姓弥之助は昔から自動車を贅沢品ぜいたくひんとは考えて居ない、行く行く実用品として各戸一台は備えねばならぬ様な時代が来るものだと思って居る。
贅沢品ぜいたくひんとなること、始めから骨董品こっとうひんとなること、民器とならぬこと、したがって民衆の生活とは没交渉になること、顧客は独り富者のみとなること。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
我々の購買力が此の便利ではあるが贅沢品ぜいたくひんと認めなければならないものを愛玩あいかんするに適当な位進んで来たのか
余と万年筆 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは贅沢品ぜいたくひんで、うなぎどんぶりが二百文、天麩羅蕎麦てんぷらそばが三十二文、盛掛もりかけが十六文するとき、一板ひといた二分二朱であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
贅沢品ぜいたくひんや、化粧品をこしらえているひまはなかった。そんなものをかえりみているどころではなかった。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
ごく無気力なある社会ではある種の物が真に生活の必需品であるが、それはほかの社会では単に贅沢品ぜいたくひんであり、また別の社会ではまるっきり知られてさえいないのだ。
主人の汗だくで怒っていわくさ、それではお前がやりなさい、へちまの棚なんて贅沢品ぜいたくひんだ、生活の様式を拡大するのは、僕はいやなんだ、僕たちは、そんな身分じゃない
失敗園 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それだのに目の前に異国情調の豊かな贅沢品ぜいたくひんを見ると、彼女の貪欲どんよくは甘いものを見た子供のようになって、前後も忘れて懐中にありったけの買い物をしてしまったのだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
株式会社が日に三ツも四ツも出来た位なので以前から資本のしっかりしているヨウさんの会社なぞは利益も定めし莫大ばくだいであったに相違ない。贅沢品ぜいたくひんは高ければ高いほどく売れる。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
して自動車はもはや贅沢品ぜいたくひんではない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
太閤様の御威勢でおこしらえになった贅沢品ぜいたくひんという贅沢品がすぐって、あの尾張名古屋の城に入れてございますようですから、たいしたものでございます。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼の社会主義的主張それ自身にもとるからである。貴族的な贅沢品ぜいたくひんに終っているからである。そうして古作品の前に立って、いかなる部分にも勝ちみがないからである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
財力ある貴公子や道楽息子どうらくむすこの玩具に都合のいい贅沢品ぜいたくひんだから売れるのではあるまい。
余と万年筆 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
純一は衝っ立ったままで、しばらく床を眺めていた。座布団なんと云う贅沢品ぜいたくひんは、この家では出さないので、帽をそこへげたまま、まだ据わらずにいたのである。布団は縞が分からない程よごれている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)