賊寨ぞくさい)” の例文
この一戦こそは、求めもしないのに、官から賊寨ぞくさいへ、わざわざみつぎの贈り物を運んできたようなものだった。分捕ぶんどり品だけでもたいへんな量である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫は又我に迫りて、嘗て即興詩人として劇場に上りし折の事を語らしめ給ひぬ。山深き賊寨ぞくさいにて歌はんは易く、大都の舞臺にて歌はんは難かるべしとは、姫の評なりき。
此方こちらはお話二派ふたはになりまして、竹ヶ崎南山の粥河が賊寨ぞくさいでは、かの(山三郎と果し合の夜)同類の者一同は寄集り、ずうっと居並んで居ります。前の方にもわきの方にも一杯でございます。
受し師匠の天道と云を縊殺しめころ僞筆にせひつ讓状ゆづりじやうにて常樂院の後住と成り謀計ぼうけいに富たる人なりと云ば寶澤はうち點頭うなづきそは又めうなりとて則ち赤川大膳が案内あんないにて享保きやうほ十一丙午ひのえうま年正月七日の夜に伊豫國いよのくに藤が原の賊寨ぞくさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこの賊寨ぞくさいで訊いてみても、公孫勝の居処は、ようとして誰ひとり知っていない。知れず仕舞いとなったのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われはかの物教へんとする賢き男女の人々の間に立ちて、上校の兒童の如くなるとき、心にはむかし賊寨ぞくさいにて博せし喝采と「サン、カルロ」座にて聞きつる讙呼くわんこの聲とを思ひ
みんなが折れて改心というような顔色がんしょくをして、山三郎の来るのを待って居りますと、此方こなたの石井山三郎は実に強い男で、たった一人で南山の粥河の賊寨ぞくさいへ其の日の夕景に乗込んで参るというお話
禁軍の連環馬軍れんかんばぐんをひきいて遠征し、敗れて、ついに梁山泊の賊寨ぞくさいに投じ、こんども敵中にいることは分っていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人を傷けて亡命せしこと、身を賊寨ぞくさいに托せしことより、怪しきおうなの我を救ひしことまで、一も忌み避くることなかりき。友の手はかたく我手を握りて、友の眼光まなざしは深く我眼底を照せり。