しょう)” の例文
余は思わず弥生半やよいなかばに呑気のんき弥次やじと近づきになったような気持ちになった。このきわめて安価なる気燄家きえんかは、太平のしょうを具したる春の日にもっとも調和せる一彩色である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
六日の夜は、流言の如く、又焼打の騒ぎあり、翌七日には、市内全く無警察のしょうを現はしけるが、浅草公園の池にては、咎むる者の無きをとし、こい釣大繁昌との報を得たり。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
いずこに動乱のしょうありや、異国人の襲来ありや、とんとそれは煙も見えないのです。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夜の燈火は、場所により、時とすると不思議のしょうを現わす事があるらしい。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孔子、晩にして易をこのみ、たんけいしょう説卦せっか文言ぶんげんついず。易を読み、韋編いへん三たび絶つ。曰く、我に数年を仮し、かくのごとくせば、われ易に於て則ち彬彬ひんぴんたらん。(『孔子全集』、一九六五)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)