誅求ちゅうきゅう)” の例文
臨時税を課するという誅求ちゅうきゅうを怒って、数ヵ月にわたって暴動を起こしたが、この時の蔭の主謀者も、松平冬次郎その人であった。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
第一部の象嵌は出来た。しかし燼余の五百部は世間の誅求ちゅうきゅうが急なので、正誤表を添えるにいとまあらずして売り出された。
訳本ファウストについて (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼女はよんどころなくお鉄と相談して、自分の持ち物などをそっと質入れして、彼の飽くなき誅求ちゅうきゅうを充たしていたが、それも長くは続きそうもなかった。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
近来、殆んど連年かかる悲惨なる目に遭い、その上苛税かぜい誅求ちゅうきゅうを受けるこのへんの住民はわざわいなるかな。天公かつら内閣の暴政をいかるか、天災地変は年一年はなはだしくなる。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
しかしパシャは常にその直属部下に出し抜かれ、その部下はまたその配下に誅求ちゅうきゅうの余地を残すのである2
しかし織田になっても武田になっても、氏元うじもとほどの誅求ちゅうきゅうはやるまいと皆が高をくくっているので、今川氏の盛衰を思うよりも、あぜに植えた枝豆の出来栄えを気にしていた。
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
権力をふるって領民を思うままにしぼる、おれの云いたいのはここだ、——権力をにぎる少数の重臣が、そこからうる利得を守るために、領主を木偶でくにし、領民を威嚇し誅求ちゅうきゅうする
若き日の摂津守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
種々なる製造貨物の生産費従ってまた価格が、消費者に対し、商法上誤謬によって高められているから、我国は、正義を口実として、新たな誅求ちゅうきゅう黙従もくじゅうすることを求められ来ったのである。
苛税かぜい誅求ちゅうきゅうの結果、少しばかりの金を儲けたとて仕方なしとの、自暴自棄に陥ったせいもあろうが、要するに大体の政治その宜しきを得ず、中央政府及び地方行政官は
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
その書は随時世人せいじんを啓発した功はあるにしても、おおむね時尚じしょうを追う書估しょこ誅求ちゅうきゅうに応じて筆を走らせたものである。保さんの精力は徒費せられたといわざることを得ない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
相手の飽くことのない誅求ちゅうきゅうには、新兵衛もさすがにもう堪えられなくなって、終には手きびしくそれを拒絶すると、長平はいよいよ羊の皮裘かわごろもをぬいで狼の本性をあらわした。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
天明八年の火事とは、正月みそか洛東団栗辻らくとうどんぐりつじから起って、全都を灰燼かいじんに化せしめたものをいうのである。幕府はこの答に満足せずに、似寄によりの品でもいから出せと誅求ちゅうきゅうした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)