親昵しんじつ)” の例文
同地の住民はかねて国王に親昵しんじつし、心から愛敬の念を捧げているため、重臣団にたいして反感を抱き、異状な昂奮を示している。
允成は寧親にも親昵しんじつして、ほとん兄弟けいていの如くに遇せられた。平生へいぜい着丈きだけ四尺のて、体重が二十貫目あったというから、その堂々たる相貌そうぼうが思い遣られる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それ故に資本家階級なればとて、勝手に私利を壟断ろうだんして下層民をしいたげる事は出来ぬ訳で、両々相調和し親昵しんじつし行くところに、初めて平和を楽しむ事が出来るんである。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
人馬親昵しんじつする奇譚どもを片端から皆嘘のようにけなしたが、それは今日来朝の外人が吉野高尾ほどな文才ある遊君ゆうくんに会わず、人に大便をかす貴族の大人をも見ぬからとて
クリストフを危険な親昵しんじつに引き込むのは、ユーディットのやり方一つだった。その親昵は彼の精神をも一度うちくじき、おそらくは前回よりもさらに完全にうちくじいたかもしれなかった。
肉の楽しみをきわめることをもって唯一の生活信条としていたこの老女怪は、後庭に房を連ねること数十、容姿端正たんせいな若者を集めて、この中にたし、その楽しみにけるにあたっては、親昵しんじつをもしりぞ
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
五十雄いそお君は、明日になったら意見が変わるだろうと予言したが、市兵衛町へむかしの家を見に行くというだけのことで、七年の間、親昵しんじつをかさねてきた庶民生活を、こうも
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
親昵しんじつのない一晩は、彼女にとってはしかつめらしくやや滑稽こっけいに思われたに違いない。彼女はクリストフにふざけないではおかなかった。しかしそれは徒労だった。彼はさらに気づかなかった。
おいおいに親昵しんじつして、俺の部屋で食事をするようになった。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)