見聞みきき)” の例文
この男の王仏元おうぶつげんというのも、平常いつも主人らの五分ごぶもすかさないところを見聞みききして知っているので、なかなか賢くなっている奴だった。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
欣々夫人の座臥ざが居住の派手さを、婦人雑誌の口絵で新聞で、三日にあかず見聞みききしているわたしたちでも、やや、その仰々しい姿態ポーズに足をとどめた。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「……俺アもうちゃんとこの眼で、この耳で、繁や倉が俺たちの悪い噂を振りまいているところを見聞みききしているんだ。」
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
そして、人々が見聞みききしたうわさを持って町の方へながれて行くと、その間を、例の六波羅わっぱが、しきりと、小賢こざかしい眼をして、罪をいであるく。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たびたび見聞みききした麻酔死の場合なども予想しました。その際、私の眼が常のごとく鋭敏でなく、手先が不確ふたしかであったのも、実に已むを得ないことなのです。
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
見聞みききが狭い、知らないんだよ。土地の人は——そういう私だって、近頃まで、つい気がつかずに居たんだがね。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それがしはこれの事を見聞みききそろにつけ、いかにもうらやましく技癢ぎようえずそうらえども、江戸詰御留守居の御用残りおり、他人には始末相成りがたく、むなしく月日の立つに任せ候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
現実として日常私たちが見聞みききするものは、ただ表面に現れた仮りの姿で、実はその根源があって、しかもその根源は、私たちの通俗な知識ではちょっと感付けないのです。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼は、何を見聞みききしても面白そうな心にわだかまりの無い牧野や小竹をうらやましく思った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
翌朝私は起き出るや否や、昨夜見聞みききした一切のことを小屋の主人に語りました。
そのユートピア的社会状態を見聞みききする小説まで書いて居ります
わたくしは色々な不思議を見聞みききいたして、驚いて9365
それを見聞みききしたのはメルチセデクだけでした。
巴里の方で見聞みききした開戦当時の光景や、在留する同胞の消息や、牧野等と一緒にあの都を立退くまでの籠城の日記とも言うべきものを書いて故国に居て心配する人達のために報告を送ろうとした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
面白い事ばかり見聞みききして楽もうとしている