襖絵ふすまえ)” の例文
襖絵ふすまえの松を自然と感ずる日本人の意識は、深いところで、西洋の意識とはちがっているという考え方である。
ネバダ通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
襖絵ふすまえ白鷺しらさぎを見つめている。自鷺の眼だけに黄色い彩具えのぐが塗ってあった。鷺が彼を睨んでいるようでもある。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが足軽の顔を御所の襖絵ふすまえに描く絵師の一人や二人は出てもよかろう。まあこれはよい方の面だ。けれど悪い面もある。人心の荒廃がある。世道の乱壊がある。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
「自信をもつというのはいいことだ」彼はこう云って、下絵のほうへ手を伸ばした、「しかし、これがもしこのまま襖絵ふすまえになるのだとすると、肝心な、なにかが足りないように思うな」
扇野 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
先ず客を招く準備として、襖絵ふすまえ揮毫きごう大場学僊おおばがくせんわずらわした。学僊は当時の老大家である。毎朝谷中やなかから老体を運んで来て描いてくれた。下座敷したざしきの襖六枚にはあしがん雄勁ゆうけいな筆で活写した。
なるほど——観瀾亭かんらんてい襖絵ふすまえのことは、わしも聞いている、それが山楽、永徳であるか、そこまではわしは知らん、しかしながら、たしかに桃山の昔をしのぶ豪華のもので、他に比すべきものはない。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが足軽の顔を御所の襖絵ふすまえに描く絵師の一人や二人は出てもよからう。まあこれはよい方の面だ。けれど悪い面もある。人心の荒廃がある。世道の乱壊がある。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
まだ七月の残暑にこの長雨なので、金泥の仏体にも墨絵の襖絵ふすまえにもカビがえそうなしあつさである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友松は中国の梁楷りょうかいの画風をならって、狩野、土佐ともべつに、近頃、独自な一家の画境を開拓し、ようやく世人に認められて来ていたが、なぜか安土の襖絵ふすまえを信長から委嘱いしょくされたときには
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)