虚無きょむ)” の例文
現在に対する虚無きょむの思想は、今尚いまなお氏を去りません。しかし、氏は信仰を得て「永遠の生命」に対する希望を持つようになりました。
今から四十分ほどにもならない前に、ロシアのある貴族が虚無きょむ党に殺されたのですが、誰もまだ彼の死について幽霊の株のことを考えていないのです。
同時に、この衝動が、若い彼に、虚無きょむ的な思想を起させはしまいかという点を、親心に、おそれもした。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷却れいきゃくしてのち飛散ひさんするとすれば、高尚こうしょうなるほとんかみごと智力ちりょくそなえたる人間にんげんを、虚無きょむより造出つくりだすの必要ひつようはない。そうしてあたかあざけるがごとくに、またひと粘土ねんどする必要ひつようい。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
国見や妙見にはつつじが美しく咲いていたので、その美くしい色彩が、虚無きょむの間に瞬間的に見えてはまた消えるその夢幻的な濃霧の遊戯を見ただけで、私はむくいられた気がした。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
彼は、女々めめしく郷里の母を想い出し、また、思うともなくい鴻芙蓉こうふようの麗しい眉や眼などを、人知れず胸の奥所おくがに描いたりして、なんとなく士気の沮喪そそうした軍旅の虚無きょむと不平をなぐさめていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)