虚子きょし)” の例文
前面の虚子きょし氏はもつと勿体ぶつて居るかと思ひしに一向無造作なる風采なり。鳴雪めいせつ翁は大老人にあらずして還暦には今一ト昔もありさうに思はる。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
今度改造社から「虚子きょしの人と芸術」について何か書けと言われたについて、その昔話をペンですることにする。
高浜さんと私 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
フロックは白い手巾ハンケチを出して、用もない顔をいた。そうして、しきりに屠蘇とそを飲んだ。ほかの連中も大いにぜんのものをつッついている。ところへ虚子きょしが車で来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おやをもり俳諧はいかいをもりもりたけ忌 虚子きょし
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
羯翁かつおうの催しにて我枕辺に集まる人々、正客しょうきゃく不折を初として鳴雪めいせつ湖村こそん虚子きょし豹軒ひょうけん、及び滝氏ら、蔵六も折から来合きあわされたり。草庵ために光を生ず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
やはりその頃であったと思うが、子規が熟柿を写生した絵を虚子きょしが見て「馬の肛門かと思った」と云った。
明治三十二年頃 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
虚子きょしが来てこのふくを見た時、正岡の絵は旨いじゃありませんかと云ったことがある。
子規の画 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時虚子きょしが来てくれてその後碧梧桐へきごとうも来てくれて看護の手は充分に届いたのであるが、余は非常な衰弱で一杯の牛乳も一杯のソップも飲む事が出来なんだ。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
それならばかつて漱石そうせき虚子きょしによって試みられた「俳体詩」のようなものを作れば作れなくはない。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
虚子きょし四方太よもたの諸君は折々この点に向って肯綮こうけいにあたる議論をされるようであるが、余の見るところではやはり物足らぬ心持がする。余の云う事も諸君から見れば依然として物足らぬかも知れぬ。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
○近刊の『ホトトギス』第五巻第九号の募集俳句を見るに、鳴雪めいせつ碧梧桐へきごとう虚子きょし共に選びしうちに
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
虚子きょしいわく、今まで久しく写生の話も聞くし、配合といふ事も耳にせぬではなかつたが、この頃話を聴いてゐる内に始めて配合といふ事に気が附いて、写生の味を解したやうに思はれる。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
柿は親指と人さし指との間から見えて居る処で、これを画きあげるのは非常の苦辛くしんであった。そこへ虚子きょしが来たからこの画を得意で見せると、虚子はしきりに見て居たが分らぬ様子である。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
虚子きょしと共に枕許まくらもとにある画帖をそれこれとなく引き出して見る。所感二つ三つ。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
以上の句をひつくるめて作者と評者との衝突点が何処にあるかといふと、つづまる処虚子きょししきりに句を活動させようとするためにその句法が言はば活動的句法とでもいふやうになつて居る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)