蒲鉾形かまぼこなり)” の例文
頭の上は大空で、否、大空の中に、粗削あらけずりの石のかたまりが挟まれていて、その塊を土台として、蒲鉾形かまぼこなりむしろ小舎が出来ている。
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
加えてく混ぜて煉ってトースパンへ蒲鉾形かまぼこなりに塗付けてテンピの中でおよそ十五分間焼きます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
表へ出ると、いつのにか曇った空が晴れて、細い月が出ている。路は存外明るい、その代り大変寒い。あわせを通して、襯衣シャツを通して、蒲鉾形かまぼこなりの月の光が肌までみ込んで来るようだ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それをパンの上へ中高ちゅうだかにちょうど薄い蒲鉾形かまぼこなりに塗ってテンピへ入れて十分間焼いて出します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「時に小夜の事だがね」と先生は洋灯ランプを見ながら云う。五分心ごぶじん蒲鉾形かまぼこなりとも火屋ほやのなかは、つぼみつる油を、物言わず吸い上げて、穏かなほのおの舌が、暮れたばかりの春を、動かず守る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
トースパンへ蒲鉾形かまぼこなりに塗ってメリケン粉へ転がして玉子の黄身へくるんでパン粉を
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
入口はまず汽車の隧道トンネルの大きいものと云ってよろしい。蒲鉾形かまぼこなり天辺てっぺんは二間くらいの高さはあるだろう。中から軌道が出て来るところも汽車の隧道トンネルに似ている。これは電車が通う路なんだそうだ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
別にこうしの肉を裏漉うらごしにして鑵詰かんづめの雁の肝の裏漉しにしたのを交ぜてそれを羊の肉へ蒲鉾形かまぼこなりに塗りつけて先ずメリケン粉をつけて玉子の黄身へくるんで、なまパンの裏漉しにしたのをつけて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
仏蘭西窓を右に避けて一脚の机をえる。蒲鉾形かまぼこなりに引戸をおろせば、上からじょうがかかる。明ければ、緑の羅紗らしゃを張り詰めた真中を、斜めに低く手元へけずって、背を平らかに、書を開くべき便宜たよりとする。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)