葵紋あおいもん)” の例文
小首をかしげながら鯉口を切って抜き払った新九郎は、思わずアッと驚かされた。それは将軍家御用鍛冶かじの初代康継やすつぐ、まぎれもない葵紋あおいもんが切ってあった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるものはまた、一行と共に動いて行く金の葵紋あおいもんの箱、長柄ながえかさ、御紋付きの長持から、長棒の駕籠かごたぐいまであるのを意外として、まるで三、四十万石の大名が通行の騒ぎだと言うものもある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しもとならべて、つきかかるやりも、乱離らんりとなって折れとんだ。葵紋あおいもん幔幕まんまくへ、きりのような、血汐ちしおッかけて、見るまに、いくつかの死骸しがい虚空こくうをつかむ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
切能きりのうの出しものは「龍神りゅうじん」である。厚板あついた着附きつけに、赤地に銀の青海波模様せいがいはもようのある半切はんぎり穿かせ、なお上から紺地金襴こんじきんらん葵紋あおいもんの龍神まき——法被はっぴともいうものを着せかける。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたの葵紋あおいもんまくのうちに、花壇かだんのように、りあがっていたお小姓こしょうとんぼぐみの一たいが、とんぼ模様もようそろいの小袖こそでをひるがえし、サッと試合場の一方に走りくずれてきて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葵紋あおいもんまくをあげて、あわただしくかけこんできたのは、菊池半助きくちはんすけであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葵紋あおいもんぢらしの蒔絵印籠……? はてな、葵紋ぢらしの……?」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)