荊軻けいか)” の例文
とあるのは人口に膾炙かいしゃした詩句で、秦始皇をしいそうとして壮士荊軻けいかえんの太子の燕丹に易水のほとりで分れた事蹟を咏じたのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
あるいは伍子胥ごししょとなっておのが眼をえぐらしめ、あるいは藺相如りんしょうじょとなって秦王しんおうしっし、あるいは太子丹たいしたんとなって泣いて荊軻けいかを送った。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しこうして彼これを以て人を勧めて顧慮する所なきのみならず、彼がみずから間部を刺さんとする、何ぞそれその挙動の荊軻けいか曹昧そうまい一流に類するや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
荊軻けいかの賦した易水の詩、そいつを残して立ち去った乞食、鳥渡ちょっと心にかかるわい。荊軻は失敗したのだからな。そうだ刺客を心掛けて。秦の始皇帝を刺そうとして。
首頂戴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今宵こよいこそはと最後の死をけっして、石門せきもん九ヵしょのかためをえ、易水えきすいをわたる荊軻けいかよりはなお悲壮ひそう覚悟かくごをもって、この躑躅つつじさきたちにしのびこんだ竹童であった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)