舌頭ぜっとう)” の例文
甲「控えろ、仮令たとい三寸不爛ふらん舌頭ぜっとうを以て陳じても最早逃れられぬぞ、是なるは番人喜助の女房梅で有る、見覚えが有るかうじゃ」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
猫と生れた因果いんがで寒月、迷亭、苦沙弥諸先生と三寸の舌頭ぜっとうに相互の思想を交換する技倆ぎりょうはないが、猫だけに忍びの術は諸先生より達者である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「群小のやからは、頼むに足りません。もしあなたが、かたく誓うならば、私は、これこそと思う胸中の一人物を、三寸不爛さんずんふらん舌頭ぜっとうにかけても、きっと起たせてみせますが」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したがって『八犬伝』の人物は全く作者の空想の産物で、歴史上または伝説上の名、あるいは街談口説くぜつ舌頭ぜっとうのぼって伝播された名でないのにかかわらず児童走卒にさえ諳んぜられている。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
水産試験場、著名の漁場漁港を巡廻し、三寸不爛ふらん舌頭ぜっとうを以て朝鮮出漁を絶叫する事、又、十二年間……折しもあれ日韓合併の事成るや、大河の決するが如き勢をもって朝鮮に移住する漁民りょうみんだけが
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おや大分だいぶむずかしくなって来たようだ。苦沙弥君、君にしてそんな大議論を舌頭ぜっとうろうする以上は、かく申す迷亭もはばかりながら御あとで現代の文明に対する不平を堂々と云うよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だが、ふたりの舌頭ぜっとうの火花は、火花とみえた瞬間に、大きな笑い声となり、また、一同の爆笑となっていた。——とはいえ、そのあぶない酒戦は、見ているだけでも気がちぢまった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
舌頭ぜっとうへぽたりとせて、清いものが四方へ散れば咽喉のどくだるべき液はほとんどない。ただ馥郁ふくいくたるにおいが食道から胃のなかへみ渡るのみである。歯を用いるはいやしい。水はあまりに軽い。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)