自刃じじん)” の例文
「——でも、他の同志は皆、自刃じじんしたり自首したようです。拙者一人が、生き伸びているのも心苦しく思われてなりません」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甚太夫はさすがに仰天ぎょうてんしながら、ともかくもその遺書を開いて見た。遺書には敵の消息と自刃じじん仔細しさいとがしたためてあった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こうおっしゃるのです——『これこれこうしたわけで約束にそむくことになるので、自刃じじんして魂魄こんぱくとなり、その魂魄が遠く百里のところをきたのだ』
もし悟れなければ自刃じじんする。侍がはずかしめられて、生きている訳には行かない。綺麗きれいに死んでしまう。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時、水戸側で三人は闘死し、一人ひとりは縛にき、三人は品川で自刃じじんしたという。東禅寺の衛兵で死傷するものが十四人もあり、一人の書記と長崎領事とは傷ついたともいう。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
武蔵野の家族が斗満とまむおとずれた其二周年が来た。かりは二たび武蔵野の空にいた。此四ヶ月の間には、明治天皇の崩御ほうぎょ乃木翁のぎおう自刃じじん、など強い印象を人に与うる事実が相ついだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
……ですから、もし越前守様の御面目上、御切腹とあれば、まことに不孝の罪をかさねますが、私も、また小林勘蔵も、山本左右太も、座をならべて、自刃じじんいたすつもりです
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは幕府の手で秘密に葬られようとしたが、六人のほかに長州屋敷へ飛び込んで自刃じじんした壮士の懐から出て来たもので明らかにされ、それからそれへと伝えられるようになった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「老先生! 老先生! 羅門塔十郎は自殺しました。羅門は遂に自刃じじんしました」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵の斯波家長は、杉本城で自刃じじんし、足利義詮よしあきら以下は、三浦方面へ、敗走した。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
経明はその後で心静かに自刃じじんした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)