膀胱ぼうこう)” の例文
長時間尿が溜っているので、下腹部が張って苦しいはずなのであるが、膀胱ぼうこうが麻痺して、出て来ないのであるらしいことが分る。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
牛の膀胱ぼうこうで作った弾丸たまなのですよ。中に赤インキが一杯入れてあって、命中すれば、それが流れ出す仕掛けです。それからね。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
火曜日の朝ごとに各の身分に応じ隊伍を編み泉水におもむき各その定めの場について夥しく快げにかつしずかにその膀胱ぼうこうくる。
河豚ふぐ提灯、これは江の島から花笠かりゅうが贈つてくれたもの、それを頭の上につるしてあるので、来る人が皆豚の膀胱ぼうこうかと間違へるのもなかなか興がある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
辞書を見ると「尿道、膀胱ぼうこうの拡張、探査につかう棒」とある。その棒が細いのから太いのにかけて、何種類かある。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
膀胱ぼうこうにはち切れるばかり水を詰めたのを針ほどの穴にらせば、針ほどの穴はすぐ白銅ほどになる。高柳君は道也の返答をきかぬがごとくに、しゃべってしまう。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
島の内の華陽堂かようどう病院が泌尿科ひにょうか専門なので、そこでてもらうと、尿道に管を入れて覗いたあげく、「膀胱ぼうこうが悪い」十日ばかり通ったが、はかばかしくならなかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
今日、この袋はお送りするのですが、おむつではどうしても不潔で細菌が犯し、膀胱ぼうこうカタルを猶悪化させますから。きのう慶応でいろいろ訊いて来たことの一つです。
「いいえ、けさからそうなのよ。とてもたまらないの。また膀胱ぼうこうカタルになったと思うのよ。——」
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たとえかなり真空になってもゴム球か膀胱ぼうこうか何かのように脚部の破裂する事はありそうもない。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
膀胱ぼうこうとを、ほんの形式だけ截り破るなぞ、あらゆる検査の真似型だけを終りますと、普通の解剖のように、各臓器の一部ずつを標本に取るような事もせずに、又も、太い針と麻糸を取り上げまして
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
れからその医師が光りかがやとうとってグット制すと、大造たいそうな血がほとばしって医者の合羽は真赤になる、夫れから刀の切口きりぐち釘抜くぎぬきのようなものを入れて膀胱ぼうこうの中にある石を取出すとかう様子であったが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)