脂身あぶらみ)” の例文
ブリスケを買う時は脂身あぶらみの附いている処でないと美味おいしくありません。それを二斤も買ってく強い塩水へ一晩漬けておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いのししの肉は牛肉や鶏のようにたいしてうまい味があるというものではないから、白色の脂身あぶらみ入用いりようである。
「ウン、そうだよ。だが、最初は蝋燭でなくて、山羊の脂身あぶらみをしぼって、燈心を燃やす油を取ったのだよ」
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あの脂身あぶらみたっぷりなイヤなおばさんの幽霊としては、あんまりしみったれで、景気のないことおびただしい。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ベチャクチャいってくれんでもいい。今日はわが輩の主君、种経略使ちゅうけいりゃくし(种は名、経略は外夷防寨の城主)の若殿のおやしきでご招待があるんだ。脂身あぶらみなどはちッともじらんとこを切れよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大病人に飲ませるのはビフチーに限ります。これは上等にすると牛肉のランという処を一斤買って脂身あぶらみのない赤身だけをけずるようにく細かく切って深い壺へ入れます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
もっとも冬場ふゆばでも、まぐろの腹部の肉、俗に砂摺すなずりというところが脂身あぶらみであるゆえに、木目もくめのような皮の部分がみ切れないすじとなるから、この部分は細切りして、「ねぎま」というなべものにして
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「そこへ置け。次には脂身あぶらみばかりのとこを、もう十斤」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを上等にしますと、豚の脂身あぶらみを二、三分位の厚さに切ってなるたけ大きく鳥の上へ載せて焼きます。モー一層上等にすると鳥の肉をいくしょも切って豚の脂身をし込みます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
霜降だの鹿だのというのは肉へ脂身あぶらみが霜を降ったようにさしている処を言うのでロース肉の美味しい処にも霜降の部分がありますし、ショーランドといって胸の処の硬い肉にも霜降がありますし
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)