ぎも)” の例文
旧字:
愛之助は電燈の直射に会って、どぎもを抜かれてたちすくんだ。すぐ目の前のドアが開いて、電燈を背にして、例の怪物が立はだかっていた。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
……もしまた、その琴の音が、風のまに、ここから近い敵の三木城にまで聞えて、彼らのあらぎもに、有情うじょうを思わせ、意味なき死をさとらせれば、これは大きなてがらだ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多分死なない程度の電流をかけて置いて、ピクピクしてるぎもを取るんだろう。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
それはとにかく、この男の子が鳥目で夜になると視力が無くなるというので、「黒チヌ」という魚のぎもを主婦が方々から貰って来ては飲ませていた。一種のビタミン療法であろうと思われる。
海水浴 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そこで、私は今にも飛びかかって来やしないかと思わず身構えをしたのですが、どぎもを抜かれた事には、相手は
盗難 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一つどぎもをぬいてやれと、それまで、お茶坊主役をつとめていた幇間たいこもちの連中が、金屏風きんびょうぶをとらせて、もう秋ではあったが、揃い浴衣ゆかた赤襷あかだすきで、かっぽれを踊って出た。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
てっきり私は六神丸の原料としてそこでぎもを取られるんだ。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
源造はどぎもを抜かれて暫くは言葉も出なかったが、それ丈けに怒りは二倍三倍になって爆発した。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「……じゃあお話しいたすが、実はその薬になる物というのは、お手前の生きぎもじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わかりよく申せば人間の生きぎも。——それへピオがまたこう書き添えてあるのじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人胆じんたんがある種のやまいに奇効があるということは、漢書でも見たことがあるが、現在の自分が生きぎもを抜かれるために飼われているのだと聞かされて、馬春堂は、あっと色を失いました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)