肉付にくづき)” の例文
私は神戸のステーションで、品格のないしかし肉付にくづきのいい若いアメリカの女が二、三人、花売りから花束を買っているのを見ただけです。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし、事実と思うことができないにしても、まざまざと見える女の眼なり、口許くちもとなり、肉付にくづきなりがどうしてもただの夢とは思われなかった。
蘇生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
背丈せたけ肉付にくづきもわからなければ、店の方でも声ばかりするのでは驚いて、不思議な噂話がパッとひろがらねばならぬ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ついに肩のあたり頸筋くびすじのあたり、梅も桜もこの君の肉付にくづきの美しきをおおいて誇るべき程の美しさあるべきやとおとし切り落し、むっちりとして愛らしき乳首、これを隠す菊の花
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「あなたは好い体格だね」と云って敬太郎の肉付にくづきめ出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
或はまた四季の眺めを形取かたど肉付にくづきのよきポモンの女神。およそフランドル名家の描きし大作は、皆これかの淫蕩いんとうなる婦女にあらざるなきを。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
両袖りょうそでまくれてさすがに肉付にくづきの悪からぬ二のうでまで見ゆ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それに加えて肉付にくづきのしまったづくりの身体は背後うしろから見ると、撫肩なでがたのしなやかに
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)