聴診器ちょうしんき)” の例文
そう云いながら、彼は手早く聴診器ちょうしんきを、かばんの中から、引きずり出しながら、勝平のふとり切った胸の中の心臓を、探るように、幾度も/\当がった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「おや、そうかね。だが、誰も医師らしい人は見えなかったし、僕の胸に聴診器ちょうしんきがあてられたおぼえもないが……」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
みんなが、聴診器ちょうしんきを耳にしている医者のように、しんちょうなおももちできいていると、太郎左衛門は
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
はいほうから病人びょうにんなのですがな。』とハバトフは小声こごえうた。『や、わたし聴診器ちょうしんきわすれてた、ってますから、ちょっと貴方あなたはここでおください。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
実際に病院の中で、白い診察衣を着て、聴診器ちょうしんきでも持っていれば、一応信用出来る。でも今の場合、この医者は和服を着て、ゆったりとソファに腰をおろしている。医者らしくない。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
兄は依然いぜんとして、長々と寝ていました。医者は一寸ちょっと暗い顔をしましたが、兄の胸を開いて、聴診器ちょうしんきをあてました。それからまぶたをひっくりかえしたり、懐中電灯で瞳孔どうこうを照らしていましたが
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)