罎詰びんづめ)” の例文
ビール一本と何だかの罎詰びんづめ一本、まさかに喇叭らっぱらないけれども、息もつかずにぐっと聞こし召して、その勢いで猛烈に、かかる山路やまじ突貫とっかんして来たのよ。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大匙三杯に罎詰びんづめのトマトソース一杯入れて塩胡椒で味をつけたソースを今の肉へ混ぜて生玉子を一つ入れて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
罎詰びんづめのビールなぞというものは腐るものではないから余計とって置いて差支えない。よろしく気持の上の後詰の分として余分の本数をとって置くべきであると。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
Sの兄は大きなバケツをげて、牛小屋の方から出て来た。戸口のところには、Sが母と二人で腰をかがめて、新鮮な牛乳を罎詰びんづめにする仕度したくをした。暫時しばらく、私は立ってながめていた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
照焼てりやきにして下さい。それから酒は罎詰びんづめのがあったらもらいたい、なりたけいいのを。」
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もっとも近年の罎詰びんづめ小売法が考案せられてから、急に僻村へきそんでも酒が手に入りやすくなり、従って酒を飲む癖を普及させたことは争われないが、是とても時を構わずに飲むという慣習が
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
戸内をのぞくと、明らかな光、西洋蝋燭ろうそくが二本裸でともっていて、罎詰びんづめや小間物などの山のように積まれてある中央の一段高い処に、ふとった、口髭くちひげの濃い、にこにこした三十男がすわっていた。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
人々の話柄はなしがらは作物である、山林である、土地である、此無限の富源より如何にして黄金をつかみ出すべきかである、彼等の或者は罎詰びんづめの酒を傾けて高論し、或者は煙草をくゆらして談笑して居る。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
初めから終いまでアクを取るのです。そうして二時間ばかり煮たらつゆと梅とを別にして梅をそのまま罎詰びんづめにしておいてもよし、丁寧ていねいにすれば裏漉にかけるとなお結構です。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)