編物あみもの)” の例文
「火の傍へお出なさい。」お盆が下げられて、フェアファックス夫人が編物あみものの道具を持つて片隅へ落ちついたときに、主人は云つた。
団員の娘たちは、あとで、いたずらをされないように、編物あみものの毛糸を、そっと毛布の下にかくしていくことを忘れなかった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女かのぢよはレースいと編物あみものなかいろめたをつと寫眞しやしんながめた。あたかもそのくちびるが、感謝かんしやいたはりの言葉ことばによつてひらかれるのをまもるやうに、彼女かのぢよこゝろをごつてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ルピック氏と姉のエルネスチイヌは、ランプの下で、ひじをついて、一人は新聞を一人は賞与の本を読んでいる。ルピック夫人は編物あみものをし、兄貴のフェリックスは暖炉だんろ両脚りょうあしをあぶっている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ところがあたしたちの受けているのは自活にえんのない教育じゃないの? あたしたちの習った外国語じゃ家庭教師もつとまらないし、あたしたちの習った編物あみものじゃ下宿代も満足に払われはしないわ。
文放古 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
七時半より七時四十分まで、女中に茶菓を命じ、風月の最中もなかを二箇、お茶を三碗きっした。七時四十分より上厠じょうし約五分にして、部屋へ戻った。それより九時十分頃まで、編物あみものをしながら物思いにふけった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
十八、九なのが二つ三つ年上の編物あみもののぞき込みながら
巴里の秋 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
フェアファックス夫人は編物あみものを取り上げ、私は彼女の傍の低い腰掛につき、アデェルは絨毯に膝をついて私の傍近く凭れかゝり
あなたの生徒は貧しい女の子ばかり——小作人こさくにんの子供たちか——上等の部で土地持の百姓の娘たちなんですよ。編物あみもの、裁縫、習字、算術なんぞがあなたの教へねばならぬ全部なんですよ。