ぎぬ)” の例文
几帳のぎぬを引き上げて源氏が中を見ると、夫人は美しい顔をして、そして腹部だけが盛り上がった形で寝ていた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのばんは、またいいお月夜つきよでありました。うすぎぬのようなくもをわけて、まんまるのつきが、まんまんたる緑色みどりいろ大空おおぞらかびるのを、少年しょうねんは、いえまえってながめていました。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほんとうに、海の旅をするのには、もうしぶんのないお天気でした。ただ、ひとつ、残念ざんねんなのは、空がすっかり晴れわたっていないので、灰色のうすぎぬをひいたようになっていることでした。