絹紐リボン)” の例文
襦袢じゅばんの袖に花と乱るる濃き色は、柔らかき腕を音なくすべって、くっきりと普通つねよりは明かなる肉の柱が、ちょうと傾く絹紐リボンの下にあざやかである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
濃いむらさき絹紐リボンに、怒をあつめて、ほろくぐるときにさっとふるわしたクレオパトラは、突然と玄関に飛び上がった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
赤に白く唐草からくさを浮き織りにした絹紐リボンを輪に結んで、額から髪の上へすぽりとめた間に、海棠かいどうと思われる花を青い葉ごと、ぐるりとした。黒髪の薄紅うすくれないつぼみが大きなしずくのごとくはっきり見えた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むらさき絹紐リボンは取って捨てた。有るたけは、有るに任せて枕に乱した。今日きょうまでの浮世と思う母は、くしの歯も入れてやらぬと見える。乱るる髪は、純白まっしろ敷布シートにこぼれて、小夜着こよぎえり天鵞絨びろうどつらなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)